SF作品では時折、「異世界や遠地に繋がる入口」が題材として扱われます。

現実世界では、そのような移動は不可能ですが、「別々の空間を繋げて、その世界と交信する」ことは可能なようです。

最近、リトアニアのアーティスト兼起業家であるベネディクタス・ギリス氏らチームは、アイルランドのダブリンとアメリカのニューヨークをリアルタイムの映像で結ぶ「ポータル」と呼ばれる未来的なオブジェクトを設置しました。

遠く離れた風景をリアルタイムで繋ぐ「ポータル」

2つの場所を視覚的に結ぶ「ポータル」
2つの場所を視覚的に結ぶ「ポータル」 / Credit:Portals.org

最近、アイルランドとニューヨークの街中に巨大な円盤が設置されました。

どこか別の世界にでも繋がりそうなこの装置は、「ポータル」と呼ばれており、5000km以上も離れた2つの世界を視覚的に繋げてくれます。

円盤内部の巨大なスクリーンが、カメラを通して、ダブリンとニューヨークの街中の映像を24時間毎日配信し続けるというのです。

5月8日にポータルが起動すると、両国で多くの人たちの関心を引き付けました。

人々はポータルを通してコミュニケーションを図っており、「ニューヨークからこんにちは」「ダブリンへ、ようこそ」などと書かれたプラカードを掲げ人もいたようです。

このプロジェクトの創設者であるギリス氏は、「ポータルによるライブストリームは、遠く離れた場所を繋ぐ窓となります」と語っています。

また「私たちの世界が本当は一体となっていることを体験するためのもの」とも続けています。

もちろん、ライブ配信やビデオ通話が当たり前の現代において、このポータルの技術自体は目新しいものではありません。

それでも、遠く離れた公共のエリアを巨大なスクリーンで繋ぐプロジェクトは珍しいものです。

ポータルは世界が1つであることを再認識させてくれる
ポータルは世界が1つであることを再認識させてくれる / Credit:Portals.org

SF映画のように別の空間へ瞬時に移動できるわけではありませんが、別の地域の人々とコミュニケーションを図ることができるという事実は、改めて私たちをワクワクさせてくれます。

こうした取り組みは、国や人種の違いによって生じる偏見を、いくらか取り除くのに役立つかもしれませんね。

ポータルの設置は秋ごろまで続く予定であり、それまでニューヨークとダブリンの人々は、いつでも「会う」ことができます。

参考文献

Portals.org

Mysterious portal connecting New York to Dublin pops up in Manhattan

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。