赤い大地が広がる火星は死の星ではなかったかもしれない。この度、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査機「パーサヴィアランス」が、火星のジェゼロ・クレーターで有機化合物を検出したという。
火星で有機化合物が発見されたのはこれが初めてではない。炭素、水素、酸素、窒素、硫黄を主成分とする同様の分子が再び発見されたわけだが、これにより赤い惑星に生命が存在したかどうかについて、科学者たちに新たな手がかりを与える可能性があるそうだ。
特に有機化合物が発見されたジェゼロ・クレーターは、過去に居住可能であった「可能性が高い」といわれる古代湖の流域である。この有機物について詳しく知ることで、火星に生命が存在したかどうかを専門家が解明するのに役立つだろう。
しかし、この発見は直ちに生命の存在を示すものではない。これらの分子は生命や生物学的プロセスに関連しているが、非生物学的プロセスによっても生成される可能性があるからだ。
米カリフォルニア工科大学の研究者が率いる研究チームは、今回の発見を『ネイチャー』誌で報告。有機物の起源については、水と岩石の相互作用、惑星間塵や隕石による堆積物など、多くの説明が可能であるという。だが、生物起源である可能性も否定されていない。
論文の共著者で自然史博物館の研究員であるジョセフ・ラッツェル・ホリス博士は、「これまでのデータから特定の有機分子を特定することはできませんが、有機物を含む可能性のあるサンプルを見つけることで、さらなる研究のために非常に興味深いです」と述べている。
また、ジェゼロ・クレーター全体で多種多様な異なるシグナルが確認されており、数十億年前に多種多様な有機物が存在していた可能性が示唆されているという。当時の火星が居住可能であったかどうかについては、まだ確かなことは言えないが、宇宙生物学者らは、多様な有機物の存在は、惑星や環境が生命を宿す可能性にとって非常に重要であると考えている。
NASAは公式に認めていないが、実は70年代に火星で採取したサンプルに生命反応があったという話がある。1970年代に行われたバイキング計画では、火星表面に着陸した2台の火星探査機に、生命の痕跡を探すための実験装置が組み込まれていた。実験は4種類あり、いずれも呼吸や代謝などで発生する生物由来の化学物質を検出しようという試みであった。科学者ギルバート・レヴィン氏が関わった実験は「ラベル付きリリースによる生命検出実験」と呼ばれるもので、放射性炭素でラベル付けした栄養素を含む水溶液を火星の土壌サンプルに滴下し、しばらく培養して、放射性炭素を含むガスが発生するかを観測するものだった。もしサンプル中に生物がいた場合、滴下された栄養素から放射性炭素を体内に取り込み、放出する呼気の中にはその代謝産物が含まれるというシンプルな原理に基づいているが、地球上でも衛生検査などで応用されている確度の高い方法の一つである。
この実験で生命の存在を示すような結果が一部得られたのだが、その内容は当時も大きな議論を巻き起こした。実験ではポジティブな反応があったのは最初の滴下だけで、同じサンプルに数日後に滴下したときには何も起こらなかった。レヴィン氏らは生物の代謝産物であると主張し続けたが、最初に観測されたガスは土壌に含まれる成分による化学反応によるもので、その後の実験でガスが発生しなかったのは土壌中に化学反応を起こすだけの成分が残っていなかったためだとする説の方が次第に優勢となり、NASAもこちらを採用した。
火星の生命が“再発見”される日はいつ来るのだろうか。今後の研究にますます注目したい。 参考:「Daily Mail」ほか
文=S・マスカラス(TOCANA編集部)
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提供元・TOCANA
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