一般的に、「雑種犬は純血種よりも体が強い。病気になりにくい」と考えられています。
しかし比較的最近、アメリカのテキサスA&M大学(Texas A&M University)獣医学および生物医学部に所属するケイト・クリービー氏ら研究チームは、2万7000匹以上のイヌを対象にした研究により、「純血種のイヌの方が病気にかかりやすい」という考えは誤解だと報告しました。
またその報告からしばらく後に、イギリスの王立獣医学校(RVC)に所属するダン・G・オニール氏ら研究チームは、イギリスのネコにおける品種ごとの平均寿命ランキングを発表しており、雑種のネコを抑えて、バーミーズやバーマンが長寿であることが示されました。
愛犬や愛猫に元気でいてもらいたいなら、単に雑種か純血種かで考慮するのではなく、個々の特徴や傾向に目を向けることが大切です。
研究の詳細は、2023年11月3日付の学術誌『Frontiers in Veterinary Science』と、2024年5月7日付の学術誌『Journal of Feline Medicine and Surgery』に、それぞれ掲載されました。
純血種の犬は雑種犬よりも健康かもしれない
飼い主たちの間で「雑種犬はタフである」という考えは一般的であり、純血種のイヌよりも、様々な病気に対する抵抗力が高いと考えられています。
今回、テキサスA&M大学のクリービー氏ら研究チームは、この一般的な認識がどれほど正確なのか、調査することにしました。
クリービー氏は、10年以上にわたり何万匹ものイヌの健康指標を追跡する取り組み「ドッグ・エイジング・プロジェクト(Dog Aging Project)」に携わっており、そこに含まれる2万7000匹以上のイヌのデータを使用しました。
世界には様々な犬種が存在しますが、このドッグ・エイジング・プロジェクトにおいて、飼育されている純血種のイヌの60%は、たったの25種類だけで占められていました。
この研究では、それら上位25種(ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、プードル、ダックスフントなど)に焦点を当て、それらのイヌの飼い主が、どんな病気や健康上の問題を報告しているか分析されました。
その結果、報告された53の病気のうち、26の症状は、雑種と純血種の間で頻度において大きな違いはないと分かりました。
実際、飼い主が動物病院に愛犬を連れていく最も一般的な理由のうちの多くは、犬種の違いにほとんど関係ないことが分かりました。
例えば、病気のTOP10は純血種と雑種でかなり似ており、特に「歯石」「変形性関節症」に関しては、ほとんど同じ頻度で発生していました。
そして最も興味深い点として挙げられるのは、純血種の飼い主のうち、愛犬に「全く病気がない」と報告したのは22.3%であり、雑種の飼い主は20.7%だったという点です。
これはつまり、純血種は雑種よりも全体的に健康であるか、そこまで大きな違いが無いことを示唆しています。
では、どうして「純血種は雑種よりも体が弱い」という考えが浸透しているのでしょうか。
それは、「特定の犬種はある健康問題を抱えやすい」という事実から来ている可能性があります。
例えば、ジャーマン・シェパードは股関節形成不全によく悩まされます。
同じように、ビーグルはてんかんになりやすく、プードルなどは緑内障になりやすいと言われています。
一方で雑種では、仮にある個体が特定の病気を抱えやすいとしても、純血種のように、「この犬種は、この病気なりやすい」などと型を作ったり分類したりできません。
このように、純血種に対する病気の傾向の把握のしやすさが、「純血種は病気になりやすい」という誤解を招いてしまっているのかもしれません。
この研究では、イヌにおける雑種と純血種の健康に対する理解を深めることができました。
では、ネコに関しては、純血種と雑種で健康面にどのような違いがあるのでしょうか。