ABB FIAフォーミュラEシーズン10の第10戦は、前日の第9戦に続いての連戦で、ドイツ・ベルリンのテンペルホフ空港跡地で開催された。

コースレイアウトは前日と全く同じで、決勝レースは周回数が2周少ないという違いだけだ。ところが、予選を見ると前日とは全く異なる結果になっているので、ドライバーのテクニックやマシンのセットアップ以外の目に見えない制御違いが大きいことが浮き彫りになる。

前日の予選ではポルシェPTを使うアンドレッティやジャガー勢が不振だったが、グループB予選では、そのアンドレッティがワンツーで通過している。またジャガーもグループAを1、3位で通過しているのだ。

一方、日産は今回も予選は不振でローランドが8番手、サッシャが9番手でデュエルスには進出していない。しかしながら決勝レースでローランドは3位に入る走りを見せているだけに、予選の不振をどう考えたらいいのか難しい。

【フォーミュラEシーズン10 】第10戦ドイツ・ベルリン 課題が見えてきた決勝でダ・コスタがポルシェの母国優勝を果たす
(画像=Berlin E-Prix ドイル・ベルリンのペンテルホフ空港跡を会場に第10戦が開催された、『AUTO PROVE』より 引用)

さて、グループA予選は前日優勝のキャシディ/ジャガーがトップ通過をし、続いてギュンター/マセラティ、エバンス/ジャガー、モルタラ/マヒンドラと続いた。

グループB予選はデニス、ナトのアンドレッティ・ポルシェPTがワンツーで、ヴァンドーン/DS、ヴェアライン/ポルシェがデュエルスに進出し、ポルシェPTが3台という結果になった。このように前日は予選最下位だったアンドレッティの2台がグループ予選をトップ通過しているのがフォーミュラEの妙だ。

さて、デュエルスではジャガーチーム同士、アンドレッティチーム同士の対決が準決勝であり、ジャガーはキャシディ、アンドレッティはデニスが勝ち上がり、デュエルス決勝ではデニス今季初のポールポジションを獲得した。それにしても、準決勝の4台は前日デュエルスには進出できなかった4台というのも妙な展開だ。

【フォーミュラEシーズン10 】第10戦ドイツ・ベルリン 課題が見えてきた決勝でダ・コスタがポルシェの母国優勝を果たす
(画像=Jake Dennis, Andretti シーズン9のチャンピオン、デニスは今季初ポールを獲得、『AUTO PROVE』より 引用)

課題が見えてきた決勝レース

スターティング・グリッドではポールが2年連続シリーズチャンピオンを取りたいジェイク・デニスで、フロントローに前日優勝のニック・キャシディ。つづいてナト、エバンス、ギュンター、ヴェアラインと続き、シーズン当初のポルシェとジャガーのパワートレインを使うチームが上位を占めている。

そしてランキング3位にまで浮上しているローランドは16番手、チームメイトのサッシャも17番手からのスタートで、同じ日産のPTを使うマクラーレンのジェイク・ヒューズが14番手、サム・バードの代理19歳のバーナードが18番手からのスタートで日産勢は中団から後ろでのスタートになった。

決勝は38周でアタックモードは4分間を2回に分けて消化することが義務付けられ、レースはスタートした。通常のレースと違うのはレース序盤は順位を争うことを避けるドライバーがいることだ。レース後に日産のローランドは「最初の5周は落ち着いて、その後追い上げるつもりだった」と話すように、序盤の混乱を避けていたことがわかる。ちなみにローランドは予選16番手からのスタートで、この第10戦でも3位表彰台を獲得している。

【フォーミュラEシーズン10 】第10戦ドイツ・ベルリン 課題が見えてきた決勝でダ・コスタがポルシェの母国優勝を果たす
(画像=スタート直後はキャシディがトップに立ち、ヴェアライン、デニス、エバンスが続く、『AUTO PROVE』より 引用)

したがって、レースはデニスがポールであったものの、1コーナーでは2位のキャシディに譲るように2番手に下がるシーンもあり、そして序盤からアタックモードを消化するチームも続出している。そのため順位は落ち着かず、各コーナーで順位が変わる展開。

こうした展開になる理由のひとつとして予選のタイムより6秒程度遅い決勝レースの展開ということがあり、ドライバーは余裕のあるレースをしているのだ。だからたとえ最後尾からスタートしたとしても、トップに立てる可能性があり、その追い上げるタイミングをどこに持っていくのかをマネージメントするレースと言えるのだ。

一方で、ペースが遅いがために常に、3ワイド、4ワイド、サイド・バイ・サイドにもなりやすく団子状態が継続する。だから接触も多く、マシンを壊す場面がありSCやFCYも出ることになる。

この第10戦も前日同様、混戦が終盤まで続き、結局レース中の順位を一喜一憂する意味がなく、また予選の順位すらあまり意味がないのではないかという疑問も生まれてくる。

【フォーミュラEシーズン10 】第10戦ドイツ・ベルリン 課題が見えてきた決勝でダ・コスタがポルシェの母国優勝を果たす
(画像=ダ・コスタ/ポルシェが通算9勝目を挙げた、『AUTO PROVE』より 引用)

結果はポルシェのダ・コスタが10位スタートから優勝し、2位にキャシディ、3位がローランドなのだ。続いて、ヴェアライン、デニス、エバンスと続いた。

全力で走行しないシーンがレース中に存在し、エネルギー消耗を抑えながらのレースというのが現状のシーズン10だ。制御の競争という領域にある今、もう少しアイディアを入れ込む必要があると感じるレースだった。

【フォーミュラEシーズン10 】第10戦ドイツ・ベルリン 課題が見えてきた決勝でダ・コスタがポルシェの母国優勝を果たす
(画像=優勝2回目のはずが、一度車両規定違反で失格しており、この第10戦が今季初優勝となったダ・コスタ、『AUTO PROVE』より 引用)

次戦は5月25日、26日に中国・上海で第11戦、第12戦が予定されている。チャンピオン争いも混沌としきて、日産のオリバー・ローランドはランキング3位におり、チャンピオンが狙える場所にきた。次戦の決勝がどうなるのか、期待したい。

第10戦終了時点 Driver Team Power Unit Point
1 ニック・キャシディ JAGUAR TCS RACING Jaguar I-Type 6 140pt
2 パスカル・ヴェアライン TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM Porsche 99X Electric Gen3 124pt
3 オリバー・ローランド NISSAN FORMULA E TEAM Nissan e-4ORCE 04 118pt
4 ジェイク・デニス ANDRETTI FORMULA E Porsche 99X Electric Gen3 102pt
5 ミッチ・エバンス JAGUAR TCS RACING Jaguar I-Type 6 97pt
6 ジャン・エリック・ヴェルニュ DS PENSKE DS E-TENSE FE23 84pt
7 マキシミリアン・ギュンター MASERATI MSG RACING Maserati Tipo Folgore 65pt
8 アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM Porsche 99X Electric Gen3 59pt
9 ストフェル・ヴァンドーン DS PENSKE DS E-TENSE FE23 43pt
10 サム・バード NEOM MCLAREN FORMULA E TEAM Nissan e-4ORCE 04 38pt
11 サッシャ・フェネストラズ NISSAN FORMULA E TEAM Nissan e-4ORCE 04 26pt

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