現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、うえまつそうの新連載「島流し奇譚」がスタート。この連載では現役教師ならではの他にはない実話怪談を紹介する。第二回の今回は宮古島にまつわる話。

宮古島のカブ畑 ― サウナで出会ったおじいさんは“最後”だったのか【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
(画像=『TOCANA』より 引用)

 2022年の11月に、私がベースを弾いているバンドのツアーファイナルで宮古島に行ったときの出来事。

 5日間ほど宮古島に滞在していた中で、毎日島にあるサウナに入っていた。実は数年前からサウナにハマっていて、全国各地に行くたびにその土地のサウナに行くことが楽しみのひとつとなっていた。

 宮古島のサウナもとても好きで毎日だいたい夕方ごろ通っていた。そんな数日間の中で、いつもサウナには私以外に地元のおじいさんふたりが決まって入っていた。

 サウナの中は毎度決まって私含め横並びで3人。5人も入れば満員という少し狭い室内で無言でポタポタと汗水垂らして、時折左側にいるおじいさんふたりが島の方言で話している、そんな空間がとても心地よかった。

宮古島のカブ畑 ― サウナで出会ったおじいさんは“最後”だったのか【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
(画像=Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

 毎日毎日それを繰り返していた最終日の5日目、夜には東京へ戻るという日の夕方、またそのサウナに入りに行くと、すでにいつものおじいさんふたりは入っていて何やら話をしていた。

「今年はカブがダメだったなぁ。去年よりよくなかったさぁ」

(え?株やってるの?最先端おじいさんだな)

そう思っていたのだがどうやらただの勘違いで、話を横から聞いていると野菜のカブのことだった。

(え?宮古島でカブって育つんだ)

ちょっとびっくりして最終日にしてついにそのおじいさんに話しかけてみた。

「あ、あの、宮古島ってカブ…育つんですか?」

「もちろん!美味しいカブが育つよ!食べさせてあげたいくらいに」

 そんな会話から私が怖い話を蒐集していると聞いて、そのカブ畑をやっているおじいさんが体験談を聞かせてくれた。

「あのよ、、最近おかしなことがあってよ。」

 そんな御年74歳のおじいさんが話すのはこんな体験だった。

“つい先日、夏が終わった頃のある日、朝から畑仕事をして、昼に帰宅して婆さんのご飯を食べて少し昼寝をする。おやつどきに起きてまた畑へと行き、夕方5時のチャイムが鳴ったもんでそろそろ終わろうかとしているとしゃがんでいる後ろの畑道をなにやらトラクターが通る。

 ドッドッドッド…1台2台3台4台…10台のトラクターが通るんだが、おかしいこの辺の畑の人間なら顔がわかるはずだが運転している人間に誰1人も知る顔はいない。

 次の日も5時のチャイムのあとにドッドッドッド…

 またトラクターが通る。次の日も次の日も。

 数日経った時にあることに気づいた。ドッドッドッドと1台目2台目3台目…5台目6台目。4台目のトラクターだけいつもここまで来ず途中の道を左に曲がって行ってるじゃないかと!

 そのいつも曲がって手前でいなくなる4台目がどうも気になって気になって。ある日腰が痛いのを我慢してどうにかこうにかその4台目のトラクターに追いついてその運転手の顔を見るとその顔、若い頃の自分の姿だったんだ。たしかに40代の頃の自分だった。

 意外すぎる人物にびっくりしているとその若い頃の自分が顔を近づけて「お前で最後だからよ!」と。そう言ってドッドッドッド…去っていなくなった。”

宮古島のカブ畑 ― サウナで出会ったおじいさんは“最後”だったのか【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
(画像=Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

そのときにそのおじいさんにはフラッシュバックしたことがあったそうで。

 まだ小学生の頃、自分の母親にいつもいつも言い聞かされていた教えがあって、それが

「いいか。人間っていうのはな、10年で生まれ変わるんだよ。例えば0歳から9歳、10歳から19歳、20歳から29歳そんな風に区切られていて例えば18歳で悪いことをしてもちゃーんと神様に謝って反省すれば次の20歳からの人生では許されるから、ちゃんと謝って反省すれば大丈夫」

 そんな母からの教えだったのだがもしこれが教育じゃなく本当のことだとしたら、若い頃の自分が74歳の今の自分に「お前で最後だからよ」と言ってきた。

 これもしかすると「今のお前の70歳から79歳までの周期で死ぬからよ」もしそう言っていたとしたら…そう思うと最初は怖かったけど、いまは受け入れてとにかく毎日を楽しく幸せに、やりたいことやって好きな友達とこうして毎日サウナ入ってるんだよ。と、純粋な笑顔で話すおじいさんを見て、私はなんだか羨ましくも感じた。

――この怪談、いままではここで終わりだったのだが続きが出来てしまった。

 それから数ヶ月、つい先日また宮古島に行く機会があったのでもちろん夕方にサウナに行った。

 ガチャ…開けると前にいたおじいさんふたりともいない。待てど暮らせど来ない。

 なんとなく気になって住んでいる地域を以前聞いていたので翌日その場所に行って現地の通行人に聞いてみた。

 するとひとりの男性が「ああ、あのおじいだろ?もちろん知ってるよ。先月、畑の真ん中で死んじゃったさ。死因は心臓発作だってことだけど変なんだよな。体にトラクターに轢かれた痕が残ってたっていうもんだからいまでも話題だよ。トラクターが通った跡なんてその畑にはなかったのに不思議さぁ」

思わぬところでこの実話怪談は完結を迎えてしまった。

文=うえまつそう

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提供元・TOCANA

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