拡張現実(AR)技術が発展したとき、スマホに変わる主要なデバイスとなるのが「スマートコンタクトレンズ」だと予想されています。
そのため多くの企業や研究機関はスマートコンタクトレンズの開発に取り組んでいます。
しかし、このデバイスで大きな課題となるのが「どこから電力を供給するか」のかということです。
最近、アメリカのユタ大学(The University of Utah)電気コンピュータ工学部に所属するエルファン・プールシャバン氏ら研究チームは、瞬きで生じる涙と太陽光や人工光源から電力を生成できるスマートコンタクトレンズ用の発電システムを開発しました。
このシステムは外部電源に依存しないため、より便利で快適なスマートコンタクトレンズの開発に役立つはずです。
研究の詳細は、2024年3月13日付の科学誌『Small』に掲載されました。
スマートコンタクトレンズにおける電源の課題
「スマート○○」と名の付く他の様々な製品と比べて、スマートコンタクトレンズの開発には、特有の難しさが付きまといます。
なぜなら、角膜は最も神経が密集している組織の1つであり、皮膚の300~600倍も敏感だと言われているからです。
スマートコンタクトレンズに硬くて分厚い部品や、少しでも刺激を与えるような装置を組み込んでしまうと、瞬きすら辛くなってしまいます。
この点、科学者たちは、小型で柔らかいチップを開発することで対応してきました。
しかし、電源の問題は一層難しいようです。
当然ですが、大きなバッテリーとワイヤーを目の中に入れることはできません。
既存の解決策のほとんどは、有線、もしくはワイヤレスによる外部電源に依存しています。
つまり、スマートコンタクトレンズに必要な電力を、外部から送るという手法です。
そのため、ほとんどのケースでは、コンタクトレンズ装着者の目や顔、またはその近くに目障りな外部装置を配置する必要があります。
そこまでするなら、「スマートコンタクトレンズではなく、スマートグラスで良い」と感じてしまうのが普通ですね。
スマートコンタクトレンズは、それ単体で機能するからこそ魅力的なのです。
こうした課題に取り組むため、プールシャバン氏ら研究チームは、スマートコンタクトレンズ内部に発電システムを組み込むことにしました。