■マッチョ男性にDV、それでも相手には事欠かない
恋愛となると、キャサリンはしばしば感情をあらわにして激情したが、それも愛しているからこそだと男たちに思わせた。時には暴力も振るっていたが、ブルーカラーの男たちはマッチョなプライドがあるため、女にDVされたなどと他言しないと計算していたのだろう。耐えかねた男が逃げても「私たちは一緒にいるべきなんだよ」と自分のもとに戻るよう命じた。
キャサリンが初めて結婚したのは1974年。2番目のパートナーとは1986年に出会い、3番目の男とは1990年に出会った。男が途切れたことはないが、別に美人なわけでも頭が良いわけでも、気の利く会話ができるわけでもない。ただセックスはうまかった。
最初の夫は処女を捧げたデビッド・ケレット。18歳で結婚式を挙げた夜「うちの両親は結婚式の夜5回ヤッたって!」と5回射精するよう求めた。しかし、デビッドは結婚式で酒を飲み続けていたこともあり3回しかイケず、激怒したキャサリンは彼の首を締めた。
そして、この日を境に感情の振れ幅が激しくなり、機嫌が良いと思ったら急に怒り出しては、デビッドに暴力を振るうようになった。ナイフをちらつかせることもあり、デビッドは心底嫌気がさし浮気をするようになった。20歳のキャサリンが最初の子供を妊娠している時も浮気をしており、彼女の精神状態は非常に不安定になっていった。
1976年5月11日、キャサリンは長女メリッサを出産。その6週間後、彼女は割れたビール瓶でデビッドを刺そうとした。デビッドは「これ以上一緒にいたら殺される」と思いつめ、ついに浮気相手と家出した。
キャサリンは荒れ、赤ん坊を乗せたバギーを激しく揺らしながら外を歩き、車が行き交う道路にバギーをつき落とそうとして警察に保護され、精神病棟に入院させられた。キャサリンは抗うつ剤を与えられて退院したのだが、すぐに生後12週目の我が子を頻繁に列車が行き来する線路の上に放置、自宅の庭で斧を振り回しているところを通報され、再び精神病棟に入院させられた。
しかし、キャサリンはその日のうちに精神病棟から自主退院し、近隣に住む女性の顔をナイフで切りつけ、デビッドの母親の家まで車で連れて行けと命令する。「デビッドの母親を殺せば、デビッドが戻ってくる」という浅はかな考えを実行しようとしたのだ。
あえなく、デビッドの母親一家は人質となり、キャサリンの車に押し込められた。しかし、ガソリンを入れるからとガソリンスタンドに立ち寄った際に、「この子は喘息で薬がいる」と息子の一人を解放するように一家が頼んだ。解放されたこの息子がすぐに警察に通報したため、キャサリンはデビッドの母親に危害を加える前に警察に保護された。キャサリンは警察で「殺す!殺す!」と大暴れしたが、起訴されることなく、また精神病棟に送り込まれた。
この頃、デビッドは妊娠した浮気相手と上手くいっていなかった。キャサリンが精神病棟に入院していることを知らされると、彼は「自分が悪かった」と迎えに行くことにした。デビッドは自分の母と共にキャサリンを車で迎えに行き、次にキャサリンの母親が面倒を見ていた娘・メリッサを迎えに行った。
しかし、キャサリンの母親はデビッドの顔を見るなり、車の窓越しに彼の首を締めた。それを見たキャサリンは、自分の母親を拳で頭を殴り始めた。後部座席にいたデビッドの母親は唖然とし、なんと暴力的な親子なのだろう、キャサリンがおかしいのは母親がおかしいからなのかと頭を抱えたと回想している。
その後、デビッドはキャサリンとクイーンズランド州に移住。デビッドは長期トラックの運転手となり、キャサリンは近くのと畜場で働くようになった。自分の仕事に生きがいを感じていた彼女は、ベッドの横の壁にナイフをかけ、時折うっとりと眺めていたという。
この頃からキャサリンは子供を虐待するようになり、デビッドの目を盗んで浮気を繰り返すようにもなった。浮気がバレたこともあったが、キャサリンは「もう一回チャンスをちょうだい」と言い、直後には2人目を妊娠する。浮気はおさまったものの、デビッドに対するDVが再び酷くなった。
ある夜のこと。遅く帰って来たデビッドの頭を、キャサリンは鉄製のフライパンで思い切り殴って頭蓋骨骨折させた。デビッドは命からがら近隣住民に助けを求め、病院に搬送され入院。やがて無事退院したデビッドだが、自宅に戻ると真っ青になった。バスタブに自分の私物全てが放り込まれて燃やされていたからだ。
デビッドはキャサリンのことを傷害事件で起訴することもできたが、子供達のためにと耐えた。だが、浮気相手たちにちやほやされたことが忘れられないキャサリンの方が、デビッドに愛想をつかし、彼のもとを去ったのだった。