サーカスで人気の曲芸の一つに「人間大砲」がある。大砲から打ち出された人間が大きく空を飛んで着地する。英ロンドンで1877年に14歳少女が初めて演じて以来、何人もの曲芸師が人間大砲を演じてきた。人気のある曲芸である一方、失敗したときのリスクも高く、重傷を負うだけでなく、時として命を落とす曲芸師が後を絶たない。
日本では、2022年6月27日に腹膜がんで死去した葛城ユキさん(享年73)の事故が有名だ。葛城さんは1983年に「ボヘミアン」をカバーして大ヒットし、その後も歌手として活動を続けてきた。しかし、2003年10月、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)のコーナー企画「人間大砲」に出場した際、ウレタンが敷き詰められたプールに顔から落下し、胸椎粉砕骨折、胸骨脱臼の重傷を負った。
葛城さんは当時、体を全く動かすことができず、引退を覚悟したという。しかし、2度の手術を受けてリハビリ期間を経た後、驚異的な回復力で翌年5月にはステージ復帰を果たした。葛城さんは芸能界に戻って来たものの、十分な訓練を受けていない芸能人に人間大砲を演じさせたことについては批判が噴出した。
チリ・アントファガスタでも2024年4月5日、サーカスで人間大砲を演じた曲芸師が重傷を負う事故が発生した。この事故を撮影した動画が海外の動画共有サイト「TheWorldWatch」などで公開されている。
大砲に腰かけているのは「ロス・バスケス・サーカス」の男性曲芸師だ。彼が筒の中に下半身を入れると、カウントダウンが始まった。彼が発射されると、観客席からは歓声が上がる。しかし、空を飛んだ彼はセーフティーネットをすり抜けて落下し、大きな音を立てて地面に激突した。彼は横たわったまま動かない。会場が不安と緊張に包まれる中、曲芸師のもとへスタッフたちが駆け寄ってきた。
地元メディアによると、曲芸師は全身の複数箇所を骨折したという。病院に搬送され、そのまま入院した。 医療関係者は、「彼の状態は重篤で、半身麻痺になる可能性があります」と語った。
当局がサーカスに派遣され、事故の調査に当たったところ、いくつかの不正行為が確認された。アントファガスタ地方労働局長、マルガリータ・ロペス氏は「彼は労働契約や社会保障の適用を受けずに非正規で働いていました。他のサーカス団員たちも同じ状況にありました」と語った。ロス・バスケス・サーカスは営業継続を許可されたが、捜査が完了するまでは空中での曲芸が禁止された。
今回の事故で重傷を負った曲芸師は、非正規雇用であることから、十分な医療を受けられるかどうかも定かではない。人々に夢と希望を与えるサーカス団が、裏では団員を使い捨ての駒として酷使しているなら社会問題だ。ロス・バスケス・サーカスが事故をきっかけに変わることを願いたい。
参考:「Está pasando」、「Daily Mirror」、ほか
文=標葉実則
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提供元・TOCANA
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