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イベントに参加できる東ホール
75年の空白を経て再オープン
イベントに参加できる東ホール
東ホールには、「目」「鼻」「結合組織」「腸」などのゾーンがあり、中央にはワークショップやゲームが催される交流スペースが設けられています。広々とした階段にはクッションが並べられ、西ホールに比べて寛げる空間になっています。
「鼻」のゾーンには、強い香りのたちこめるトンネルがあります(下写真)。爽やかな森の香りに、バニラの甘みを足したような、どこか懐かしい香りです。
真っ暗なトンネルの中には、18世紀の哲学者ジャン=ジャック・ルソーの言葉「嗅覚は想像力の感覚である(L'ODORAT EST LE SENS DE L'IMAGINATION)」が刺繍された作品がありました(上写真)。ルソーは、人間には野生的な嗅覚に加えて、想像力と共に働く嗅覚があり、それは特定の感情や思い出を呼び覚ますと説きました。
懐かしい香りをかぐと胸がキュンとする感覚は、人間以外の生き物にもあるのだろうかと、ふと疑問に思いました。
東ホールの奥にある図書コーナー(上写真)は、私がフローテ・ミュージアムをリピートする理由のひとつです。さまざまな展示を体験した後に、ほっと一息つける場所です。
フローテ・ミュージアムには、今回ご紹介した展示に加えて、さまざまな示唆に富むコンテンツが用意されています。小さな映画館のようなセットでは、地球上で巡りゆく命を写した映像作品が上映されていたり、人間の目や耳では感じられない植物のコミュニケーション方法が紹介されていたり、生物多様性や人間の責任について考えるきっかけになります。
75年の空白を経て再オープン
フローテ・ミュージアムは、185年の歴史を持つアルティス動物園によって運営されています。1851年に建造され、当初はアムステルダムで最初のミュージアムでした。1947年に一度閉館したものの、2017年から4年にわたる修復工事を経て、2022年5月10日に現在のミュージアムがオープンしました。
館内には19世紀の雰囲気がほぼそのまま残され、左右に分かれる「蝶の階段」もかつての輝きを取り戻しました(上写真)。展示ケースのガラス扉やフローリングの木材も、当時のものが使用されています。1974年にはオランダの国家遺産に指定されており、建物そのものにも一見の価値があります。
フローテ・ミュージアムで人間と生き物、そして地球とのつながりを学んだ後は、いつもの景色が違って見えてきます。キュレーターのエヴェリーン・ヘンセル氏の、「人間を広い視野で捉えることができれば、未来についてよく考え行動できるようになる」という言葉が心に響きます。
生物多様性についての理解を深めたい方は、アルティス動物園とフローテ・ミュージアムの両方を訪れてみてください。隣同士にあるので、1日で両方を訪れることもできますし、お得なコンビネーションチケットもあります。