顕著に表れた皇后杯決勝との違い

浦和に残ったこの課題を3月以降の公式戦で解決したのが、先述の皇后杯決勝でベンチ入りしながら出場がなく、3月3日の神戸戦(WEリーグ第8節)を境に先発に定着した栗島だった。

今回のAFC女子クラブチャンピオンシップ決勝でも、栗島は的確なポジショニングで浦和のビルドアップを牽引する。適宜味方2センターバック間へ降り、[5-3-2]の守備隊形で構える仁川の2トップとの数的優位(3対2)を確保していたほか、いつものようにセンターバック石川と右サイドバック遠藤優の間へ降りる場面も。これはWEリーグ屈指の快足MF遠藤を高い位置へ上げるための工夫であり、かねてより栗島が繰り返しているプレー。この「いつものプレー」が、アジア女王の座がかかる大一番でも浦和に落ち着きをもたらした。

清家貴子 写真提供:WEリーグ 

前半の2ゴールでアジア女王に

前半13分、浦和は敵陣でボールを失うと、最終ラインの背後へ縦パスを通される。このパスの処理を同クラブDF長嶋玲奈が誤り、ボールロストから仁川の攻撃を浴びると、MFイ・ソヒにミドルシュートを突き刺された。

仁川にワンチャンスを物にされる苦しい展開となったが、浦和は先述の通り栗島のポジショニングが冴え渡り、ビルドアップが徐々に安定していく。迎えた前半22分、敵陣右サイドへ攻め上がった栗島がここで攻撃の起点を作り、中央のMF伊藤美紀(左サイドハーフ)へパスを送る。伊藤が仁川の最終ライン背後へ浮き球を送ると、これに反応したFW清家貴子(右サイドハーフ)が相手GKキム・ジョンミの頭上を射抜くシュートを放ち、同点ゴールを挙げた。

同26分にはMF塩越柚歩のコーナーキックにFW島田芽依がヘディングで合わせ、ゴールゲット。浦和が前半のうちに試合をひっくり返した。

仁川は後半から布陣を[4-4-2]に変えたものの、これにより浦和はハイプレス(前線からの守備)を仕掛けやすい状況に。FW島田とトップ下の塩越の2人で仁川の2センターバックへアプローチしやすくなったほか、栗島と柴田の2ボランチも相手の2ボランチを捕捉。浦和は駄目押しの3点目こそ奪えなかったが、敵陣でのボール奪取からいくつかチャンスを作り、仁川に反撃の機会を多く与えず。前半のリードを守り抜き、アジア女王に輝いた。


浦和レッズレディース 写真提供:WEリーグ