医療分野に注力して他社と差別化

他社との差別化に取り組むJeenieはスマホ・タブレット・PCはもちろん、固定電話にも対応。PCでZoomの拡張機能を使えば、別途ソフトを立ち上げることなく通訳機能が使える。さらに手話にも対応しており、「誰にでも」サービスを提供するというミッションに忠実な姿勢が見て取れる。

だが、いちばんの特色は医療分野に注力していることだ。公式のLinkedInアカウントでも医療分野での活用を真っ先に挙げているほか、公式サイトの「ニュース」でも医療通訳に関する記事が数多く見られる。

Image Credits:Jeenie

医療通訳者としてJeenieに登録するには、医療分野で最低2年の通訳経験やHIPAA(患者の医療上保護について定めるアメリカの法律)研修の受講証などが求められる。こうした厳しい条件を課して、通訳サービスの質を担保しているのだ。

Jeenieの通訳サービスは実際にアメリカの医療業界に浸透しているようだ。顧客リストには全米屈指の医療機関であるMayo ClinicやHennepin Healthcareや、患者の移送サービスであるroundtripなども名を連ねる。

また、通訳者の労働条件への配慮も忘れない。他社よりも報酬を高めに設定しているほか、教育の機会も提供。通訳者を単なる「ギグワーカー」として捉えていたら、このような取り組みはあり得ない。

ユーザーの選択肢を増やすことにも貢献

「手頃な料金」をミッションに掲げている同社だが、同業他社と比べると金額は高いと言わざるを得ない。たとえばOyraaでは1分1ドル前後の通訳者が多数なのに対し、Jeenieは2ドルからという設定になっている。通訳の質を高く保つための取り組みを考えると、致し方ないところだろう。

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医療など重要な局面や手話が必要な場面はJeenieで乗り切り、日常会話など一般的な通訳はOyraaなどで済ませるといった使い分けもできる。Jeenieがユーザーに有益な選択肢を与えていることは間違いない。

オンラインでの通訳仲介は、ともすれば価格競争に巻き込まれてもおかしくないが、Jeenieは通訳の質を高め、医療通訳に注力することで成功を収めてきた。今後、この分野で圧倒的な地位を確立できるのか注目していきたい。

引用元:Jeenie

(文・里しんご)