■半世紀近くの時を刻む 赤坂繁華街の隠れ家

BARTENDER

水沼斉志さん(バーテンダー歴35年)

今宵の赤坂は、なんだか凍えるような寒さ……。ああ、こんな日はバーの奥で早く温まりたいと、ドアを開ければいつもの顔。バーテンダーの水沼斉志さんが、優しく迎えてくれた。

本格派の料理と洋酒を味わう「タート ヴァン」(赤坂)|フードを愉しむBAR
天井の高い造りのため、バックバーは4段もあって、奥行きのある空間を形づくっている。(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

「お湯割りにしますか?」と、こちらの気分を察してくださる。ラフロイグ10年で作ってもらおう。S字のカウンターに腰を下ろして待つ。湯気とともにスモーキーな香りが立ち込めてきた。嬉しい瞬間。ふうふう、口をつける度に体が癒えていくようだ。

「お湯割りは丁子を少し入れて作るんですよ。ただアイラモルトのような香りが強めの酒だと何も入れない方が良いんです」

酒の特性や水との相性を知り尽くす水沼さんは、ここ「タート ヴァン」の2代目オーナー。昭和54年(1979)に先代の古澤勝三郎さんが開いた店で、水沼さんは従業員として働いていたが、平成11年(1999)に店を引き継ぎ、それから約25年になる。

本格派の料理と洋酒を味わう「タート ヴァン」(赤坂)|フードを愉しむBAR
昭和54年(1979)の創業から約45年。アンティーク風の壁面ランプもいい味を出している。(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)
本格派の料理と洋酒を味わう「タート ヴァン」(赤坂)|フードを愉しむBAR
カウンターには昔使われていたタプロースの樽が置かれている。(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

「前オーナーは元々、ホテル・ニューオータニの一期生でした。この店もバブルの頃は4名で回していましたが、今はご覧の通り一人です」と水沼さん。少し寂しげに笑ったが、先代の頃からのお客さまにも愛され続ける店である。

2杯目はブレンデッドのハイボールに切り替え、小腹も減っているので「特製ナポリタン」を頼んでみた。自家製トマトソースに細麺で魚介たっぷりのナポリタンは、元々賄いで食べられていたものをメニューにしたそうだ。

「最初は『魚介系トマトパスタ』という名前でしたが、全然売れない(笑)。思い切って『ナポリタン』に変えたら人気メニューに……」という裏話が面白い。

本格派の料理と洋酒を味わう「タート ヴァン」(赤坂)|フードを愉しむBAR
特製ナポリタン(1500円)。自家製のトマトソースと魚介類をふんだんに使ったペスカトーレ風。店の名物的存在はぜひ味わいたい。(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

実際うまい。するする手繰れてしまう、〆にも飲みながらのつまみにもなる優れものだ。ピクルス、フォアグラ、レーズンバターやビーフジャーキーといった料理は先代からの伝統を引き継いでの自家製。手が込んでいるのに、それほど値が張らないのはありがたい限り。身も心も温まり、満足して店を出た。

ちなみにこの店、入り口がとてもわかりづらい。路地というよりビルとビルの細い隙間を抜けていった先にあるのだが、それが「隠れ家」のようでファンが居つく理由なのかもしれない。次回また迷わずに来られるだろうか……。

本格派の料理と洋酒を味わう「タート ヴァン」(赤坂)|フードを愉しむBAR
ブランデーベースの「サイドカー」(1500円)を作っていただいた。(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)
本格派の料理と洋酒を味わう「タート ヴァン」(赤坂)|フードを愉しむBAR
天井が高く、程良くカーブしたカウンター。スペースの割に圧迫感がない。(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

■冬の一杯

ラフロイグ10年 (1400円)

本格派の料理と洋酒を味わう「タート ヴァン」(赤坂)|フードを愉しむBAR
(画像=『男の隠れ家デジタル』より 引用)

アイラ島で造られるアイラモルト。いわゆるスモーキー・アイラの代表格だ。ドライで飲みごたえある個性的な味わいで香りが立ち、お湯割りとの相性も良好。

タート ヴァン
東京都港区赤坂3-19-3 一ツ木ビル別館 2F
TEL:03-3582-8891
営業時間: 18:00~翌3:00(土曜〜23:00)
チャージ:なし 席数: 23席
定休日:日曜、祝日
アクセス:東京メトロ「赤坂見附駅」より徒歩3分

文/上永哲矢 撮影/菊田香太郎

提供元・男の隠れ家デジタル

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