昨年10月期の連続テレビドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)で、原作者の意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされる問題。『セクシー田中さん』の制作にあたっては原作者の芦原妃名子さんは、ドラマ化を承諾する条件として、原作代理人である小学館を通じて日本テレビ側に、必ず漫画に忠実にするという点などを提示していたが、その条件が小学館側から日本テレビに正確に伝えられていなかった可能性があるとニュース番組『Live News イット!』(フジテレビ系/1月30日放送)などで伝えられている。その小学館が、過去にも作品の映像化において原作者の意向をテレビ局側に正確に伝えていなかった事例があるという告発がなされ、注目されている。テレビ界全体に広がる原作改変の問題。原作の出版元の動きにも原因の一端があるのだろうか。業界関係者の見解を交え追ってみたい。

『セクシー田中さん』の制作にあたっては原作者の芦原さんは、ドラマ化を承諾する条件として日本テレビ側に、必ず漫画に忠実にするという点や、ドラマの終盤の「あらすじ」やセリフは原作者が用意したものを原則変更しないで取り込むという点を求めていたとされる。芦原さんが1月にブログなどに投稿した文章によれば、何度も大幅に改変されたプロットや脚本が制作サイドから提出され、終盤の9〜10話も改変されていたため芦原さん自身が脚本を執筆したという。芦原さんは1月29日、栃木県内で死亡しているのが発見された。

 問題が表面化したのは昨年12月のことだった。脚本を担当する相沢友子さんは自身のInstagramアカウントで、

「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり、過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました」

「今回の出来事はドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられるものでした。この苦い経験を次へ生かし、これからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせています。どうか、今後同じことが二度と繰り返されませんように」

と投稿。9話・10話の脚本は自身が担当していない旨を説明した。

 これを受けさまざまな憶測が飛び交うなか、1月に芦原さんは自身のブログ上で経緯を説明。ドラマ化を承諾する条件として、制作サイドと以下の取り決めを交わしていたと明かした。

<ドラマ化するなら『必ず漫画に忠実に』。漫画に忠実でない場合はしっかりと加筆修正をさせていただく>

<漫画が完結していない以上、ドラマなりの結末を設定しなければならないドラマオリジナルの終盤も、まだまだ未完の漫画のこれからに影響を及ぼさない様『原作者があらすじからセリフまで』用意する。原作者が用意したものは原則変更しないでいただきたい>

 芦原さんは、これらの条件は<脚本家さんや監督さんなどドラマの制作スタッフの皆様に対して大変失礼な条件>であると認識していたため、<この条件で本当に良いか>ということを原作漫画の発行元である小学館を通じて日本テレビに何度も確認した上でドラマ化に至ったという。

 だが、実際に制作が進行すると毎回、原作を大きく改編したプロットや脚本が制作サイドから提出され、

<漫画で敢えてセオリーを外して描いた展開を、よくある王道の展開に変えられてしまう>

<個性の強い各キャラクター、特に朱里・小西・進吾は原作から大きくかけ離れた別人のようなキャラクターに変更される>

といったことが繰り返された。そして1~8話の脚本については芦原さんが加筆修正を行い、9~10話の脚本は芦原さん自身が執筆し、制作サイドと専門家がその内容を整えるというかたちになったという。

 前出のフジテレビ『Live News イット!』報道によれば、「原作を変えてほしくないことを脚本家も聞いていなかった」可能性があるという。

フジテレビ『海猿』をめぐる問題

 その小学館で過去に同様の事例があったという見方も出ている。同社が出版している漫画『海猿』は04年にフジテレビ製作で映画化されたが、原作者で漫画家の佐藤秀峰氏は今月2日、「note」上に『死ぬほど嫌でした』と題する記事を投稿。以下のように綴った。

<漫画家は通常、出版社との間に著作権管理委託契約というものを締結しています。出版社は作品の運用を独占的に委託されているという論理で動いていました。契約書には都度都度、漫画家に報告し許諾を取ることが書かれていました。が、それは守られませんでした>

<すでに企画が進んでいることを理由に、映像化の契約書に判を押すことを要求されました>

<こうして僕は映像に一切文句を言わない漫画家となりました。一方、出版社への不信は募ります>

<出版社は、テレビ局には「原作者は原作に忠実にやってほしいとは言っていますけど、漫画とテレビじゃ違いますから自由にやってください」と言います。そして、漫画家には「原作に忠実にやってほしいとは伝えているんだけど、漫画通りにやっちゃうと予算が足りないみたい」などと言いくるめます>

 その後、映画は第4作まで制作されたものの、フジテレビからアポなしの直撃取材を受けたり、関連本を無断で出版されたりしたことで不信感が高まり、契約更新を拒絶。その結果、現在では『海猿』シリーズはテレビでの再放送やネット配信は行われていない。

 このほか、小学館をめぐっては、『金色のガッシュ!!』の作者で漫画家の雷句誠氏がX上で、

<一つ言えるのは日テレも小学館も、組織です。そして漫画家は個人です。コレだけ見ても芦原先生がいかに苦しい戦いをしたかがわかります>

とポスト。雷句氏はかつて同社が出版する「週刊少年サンデー」で『金色のガッシュ!!』を連載していたが、編集部とのトラブルが原因で2007年に連載を終了。5枚のカラー原稿を紛失されたため同社を提訴したことがある(のちに和解が成立)。