4気筒と6気筒、2種類のノーズ
当連載では第29回にて、十代目マークⅡであるX110型系のカタログをご紹介しているが、今回はX~の型式の始まりである二代目、X10/20型系マークⅡを採り上げたい。
トヨタ・マークⅡの初代モデルは、1968年9月にトヨペット・コロナ・マークⅡとしてデビューしている。車名が示す通り、コロナの上級版としてクラウンとの車格のギャップを埋めるモデルであった。同年、先に登場している日産のローレルと同等の車格となるクルマであり、ボディは4ドア・セダンと2ドア・ハードトップ、さらにワゴン/バンやピックアップがラインナップされていた。スタイリングはコロナの拡大版というイメージで造形され、エンジンラインナップは4気筒のみ。結果としてローレルには優位に立った初代マークⅡだったが、代わりに強敵として浮かび上がってきたのはスカイラインだった。
そこで、1972年1月のフルモデルチェンジで登場した二代目マークⅡは、直列6気筒エンジン搭載車をラインナップに加え、スカイラインとの対決に臨むこととなったのである。ボディサイズは全長・全幅ともに若干拡大、直6搭載車はスカイライン同様にノーズが延長されていた。その差は95mm、ただし前後オーバーライダーを含むが、スカイラインと異なるのはボディの延長分はフロントオーバーハングのみが引き受けていたことで、ホイールベースに差はない。
ボディ形式は4ドア・セダンと2ドア・ハードトップ、そしてワゴン/バンの3種類。そのスタイリングの特徴はファストバックのプロポーション(セダンはセミファストバック)と埋め込み式の前後バンパーにあり、全体に滑らかな造形となっていた。モチーフは「飛び立とうとする飛行機」とのことで、後ろ下がりに入れられた側面キャラクターラインにそれが表されている。
レイアウトはFR、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアは先代のリーフリジッドから4リンクに進化。エンジンは直6が1種、直4が4種。まず、最高グレードLに搭載されたのが直6 2LのM型で、最高出力110ps。スポーツ性を極めた2000GSSには、直4 DOHC 2Lの18R-G(145ps)。OHCの2Lは2種あり、ツインキャブ装着の18R-B(120ps:ハイオク仕様)は2000GSLとSL(2ドアのみ)に、シングルキャブの18R(105ps)は2000GLおよびDXに組み合わされた。唯一の1.7Lである6R(OHC、95ps)は1700DXのみの設定である。
デビュー後も商品力を高める努力は怠らず、数か月後には2000GSLにEFI仕様を、Lにはツインキャブ仕様を追加。翌年にはマイナーチェンジを行い前後グリルのデザインを変更、特にセダンのリアスタイルは若干マイルドなものに改められた。1974年には再びマイナーチェンジ、フロントバンパーが埋め込み式ではなくボディから突き出した形となる。1975年と1976年には排ガス規制適合のための変更が行われ、1976年12月に三代目へとフルチェンジされたのであった。
全16ページに凝縮された前期型ならではの内容
さて、ここでご覧いただいているカタログは初期型、あるいは1度目のマイチェンを受けたタイプを中期型とすれば前期型のもので、コード「4704」と記されていることから、1972年4月発行のものと思われる。GSLにEFIを装着した仕様の案内も内容に含まれているので、その追加に合わせて作られたものであろう。サイズは245×296mm(縦×横)、ページ数は表紙を合わせて全16ページだ。
このページ数からも分かる通り、このカタログは簡易版と言ってよいものである。そのため内容としては若干窮屈に思われるところもあり、GSSなどはイメージ的な写真1カットのみで済まされている。カタログの作りとして特に注目すべきところもないが、初期セダンのリア周り形状の複雑さ(左右下端が垂れ下がった形から”ニヤケテール”などとも呼ばれる)には特に注目したい。
前述の通り、デザインのモチーフとなったのは「離陸しようとする飛行機」ということだが、それは逆に言えば、地面に根を張ったような安定感とは縁遠い形だということでもある。特に旧車イベントなどとは関係なく、この二代目マークⅡの2ドア・ハードトップが走っているのを街で何度か見かけたことがあるのだが、その後ろ姿の腰高さ・安定感のなさには、今の目で見るとなかなか驚かされるものがあった。
文・秦正史/提供元・CARSMEET WEB
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