「得点できなかったのが悔しかった」
相手の守備ブロックの隙間でボールを受けることが多かった伊藤が、直近のリーグ戦でゴール前への侵入を増やしている理由は何か。4月25日のチームトレーニング(全体練習)終了後に行われた囲み取材で、筆者は伊藤にこの点を尋ねてみた。
ー最近、相手最終ラインと中盤の間でボールを受けるより、ゴールに直結するプレーが増えていますね。こうしたプレーを意識するようになったきっかけは何でしたか。
「(4月14日の第14節)ノジマステラ神奈川相模原戦で、清家選手と塩越(柚歩)選手からクロスが上がってきたんですけど、自分がゴール前に入れなくて、クロスボールが通過してしまうシーンが2本ありました。自分がゴール前に詰めていれば得点できたので、それを逃したのがとても悔しかったです。それで安藤選手にクロスへの入り方や(ゴール前での)ポジション取りを訊いて、こうした部分を修正しました。クロスボールに対して入っていく(ゴール前へ飛び込む)意識は強くなりましたね」
伊藤が明かしたクロスへの合わせ方
伊藤は第17節広島戦終了後にも筆者の取材に応じ、クロスボールへの合わせ方の極意を明かしてくれた。
ー伊藤選手は小柄(身長150cm)ですが、空中戦においてクロスボールにピンポイントで合わせることができています。そのためのコツを、全国のサッカー少年・少女の皆さんのために教えていただけますか。
「『せえの!』で(相手守備者と同時に)競り合っても難しいので、私は相手の見えないところからゴール前に入るというのを意識しています。見えないところからゴール前に入ってこられると、相手としても対応が難しいと思います。それを練習のなかでやり続けました」
「クロスを上げる人とタイミングを合わせるのも大事ですね。あと、私の場合は『こういうボールが欲しい』というのを、クロスを上げる選手に伝えています」
ーどういうクロスボールであれば、伊藤選手は合わせやすいですか。
「滞空時間のあるボールですね。こうしたクロスが上がると、相手としてはどうしてもボール(だけ)を見てしまいますし、体も止まってしまいます(その場でジャンプする形になる)。ふわりとしたクロスボールのほうが、私としては後ろから勢いをつけてゴール前へ入りやすいですね」
広島戦の先制ゴールも、滞空時間が長めの栗島のクロスボールに伊藤がヘディングで合わせたことで生まれている。このとき伊藤はペナルティエリア内の広島MF島袋奈美恵の死角(背後)からクロスボールの落下点に入っており、まさにコメント通りのプレーだった。
常盤木学園高校での活躍を経て、2014年にINAC神戸レオネッサに入団した伊藤。基本布陣[4-1-2-3]のアンカー(中盤の底)や3バックの一角など様々なポジションを経験し、自身のプレーの幅を広げると、2023/24シーズン開幕前に浦和へ移籍した。多彩すぎるこの28歳MFが、浦和をWEリーグ史上初の連覇へと導くかもしれない。