人気YouTuberのヒカルは7月16日にYouTubeに投稿した動画内で、「早稲田、東大とか何万人も入ってるとこ行ってすごいとかあほ」と発言。SNS上ではヒカルの考えに対して賛否が分かれ、議論を呼んでいる。文部科学省の調査によると、早稲田大学は学部生のみで3万8000人を超え、東京大学も学部生のみで在籍者数は1万3000人以上、慶應義塾大学の在籍者数は3万3000人以上となっている。これだけ多くの学生が在籍する大学に4年間という時間と高い学費を使って進学する意味はあるのだろうか。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に話を聞いた。

早稲田大の在籍者3万人…希少価値が低い高偏差値大学、進学のメリット大の理由
(画像=『Business Journal』より 引用)

今や高学歴を目指すのは当たり前?数字でみる高偏差値大学の価値

同世代のなかで高偏差値大学に在籍する人の割合はどのくらいなのだろうか。

「高偏差値・難関大学をどこで区切るか、にもよります。旧帝大・一橋大学と早慶上智、MARCH、関関同立の20校だけで見ても、学生数は50万人超です。文部科学省『学校基本調査』によると、2022年時点で学生数は大学院生を含めて293万人。20校・50万人としても、17%。さらに、東京理科大学、筑波大学などを含めていけば20%は超えるでしょう。数字だけ見れば、そこまでの希少価値はない、との言い方は成立します」(石渡氏)

高卒と大卒の差は5000万円から1億円以上も

高偏差値大学に在籍している学生の比率や将来的なキャリア形成などを勘案すると、高額の学費を払って4年間も大学に通うメリットはあるのだろうか。

「大学生の17~20%が難関大学に在籍しているから希少価値がない、とするのはあまりに短絡的です。就職やキャリア形成において、大学進学の価値が低ければ当然ながら、大学進学率は横ばいか減少しているはず。ところが実際は1990年と2022年を比較すると大学進学率は24.6%から56.6%と2倍以上、増えています。」(同)

さらに、人口減少は加速し、特に若者の人数が減っているにもかかわらず、大学に行く人数は増えているそうだ。

「18歳人口は1990年から88.4万人も減少しているにもかかわらず、4年制大学進学者は14.3万人も増加しています(いずれも学校基本調査)。これは、大学進学の価値を認める保護者ないし高校生が多数派で増加していることを示します。ヒカルさんのようなYouTuberは別ですが、会社員だと、高卒と大卒とでは生涯賃金が5000万円から1億円以上の差が出るとの試算もあります。『難関大の学生は珍しくない』のは事実ですが、その1点だけで『進学の価値がない』と決めつけてしまうのはいかがなものか、と考えます」(同)

令和に高卒採用は厳しい?奨学金を借りてでも進む大学のメリット

最近の社会情勢を踏まえると、どのようなケースで大学に通うメリット・意義があるといえるのか。

「18歳人口が減少しているにもかかわらず4年制大学進学者が増えている背景の一つにあるのが、高卒採用市場の空洞化です。高校卒業後の進路で1990年には高卒就職は60.7万人・35.2%でした。それが2022年には14.5万人・14.7%と激減しています。これは、高卒採用の求人が減った、というよりは、高卒採用(就職)を考える高校生が激減し、その分が大学進学にシフトしたことを意味します」(同)

高卒で働く人が減った理由として挙げられるのは、将来性や生涯賃金だという。

「1990年代以前の高度成長期であれば、高卒就職でもその雇用条件は決して悪いものではありませんでした。しかし、社会の高度化・情報化が進み、大学に進学すると教育期間が長い分だけ、さまざまな知識・技術を身に付けることが可能です。ヒカルさんのようなYouTuberなど、才能がものをいう世界では学歴の有無は影響しないかもしれませんが、会社員や公務員、医療職などであれば、大学進学のメリットや意義は大きいのではないでしょうか」(同)

才能がある人には無縁の学歴

必要な人にとっては大きなメリットや意義がある、高偏差値大学への進学。今回議論を呼んだヒカルの発言を、石渡氏はどのように捉えたのだろうか。

「たとえば、千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希投手は高卒ですし、将棋の藤井聡太・八冠は名古屋大学教育学部附属高校を2021年に中退しました。これは中卒という扱いになりますが、彼らの学歴がどうなのかは、彼らの輝かしいキャリアの前ではまったく意味がないものです。しかし、ヒカルさんを含め学歴とは無関係の世界で成功している人が学歴無用論を主張しても、それは多くの人に当てはまりません。彼はかつて、Twitterで『学歴はあった方がいいでもそれが全てではない』(2018年1月28日)とコメントされています。私もまったく同感であり、それ以上でもそれ以下でもありません」(同)

(文=LUIS FIELD、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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