セレンディクスのプレスリリースより(慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター 設計・CG・資料提供:益山 詠夢)  住宅価格の高騰が続くなか、500万円で購入できる一戸建て住宅が話題を呼んでいる。セレンディクスが近く発売するコンクリート製住宅「フジツボモデル」で、49平方メートル、1LDKの平屋建てで水回りも完備されており、独身世帯や夫婦2人世帯が暮らすことは可能だといえるが、住宅購入の選択肢として検討に値するのかどうか、また注意点などはあるのか、専門家に解説してもらう――。

 住宅の高止まりが続いている。不動産経済研究所によると2022年10月の首都圏の新築マンション一戸当たりの平均価格は6787万円、東京カンテイによると23年1月の首都圏の新築一戸建て住宅の平均価格は4525万円となっており、東京23区や山手線の内側エリアともなれば、さらに跳ね上がる。東京カンテイによれば、23年1月の東京都千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区の中古マンションの平均価格(70平方メートル当たり)は9965万円であり、「中古マンションでも1億円」という状態になっている。

 そんななか、500万円で購入できる一戸建て住宅を発売するのがセレンディクスだ。同社は昨年、10平方メートルの球体型ハウス「Sphere(スフィア)」を発売。価格は約300万円でグランピング施設や災害用住宅を想定したものだったが、今回発売するフジツボモデルはRC造の平屋住宅で、前述のとおり水回りなど生活に必要な設備は一通り完備され、耐火性や耐水性も基準をクリア。慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同開発したもので、同社によれば高齢夫婦が通常の住宅として使用することを想定しているという。

 スフィアとフジツボモデルに共通するのが、3Dプリンタでつくるため24時間程度で完成するという点。安価なコンクリートを使用することに加えて工期が短い点も、低価格の要因かもしれない。

 6日付「デイリー新潮」記事によれば、フジツボモデルへの問い合わせはすでに2000件を超えるなど注目度は高いようだが、土地代などは別途かかるため、もし東京の都心に新規で土地を取得して建てるようなケースだと億単位のコストが発生することになるため、実際の購入に際しては検討すべき項目は多い。

 フジツボモデルの購入は普及する可能性はあるのか。住宅ジャーナリストの山下和之氏に解説してもらう。

日本人とマイホームの関係を劇的に変える可能性

 親からの相続などでマイホームを得られない人にとっては、マイホーム獲得が一生の仕事であり、大げさにいえば一生を住宅ローンに振り回される。それが、500万円ハウスが実現すれば、日本人とマイホームの関係を劇的に変える可能性がある。その意味で500万円ハウスはたいへん注目される。

 たとえば、住宅金融支援機構と民間提携の住宅ローンであるフラット35を利用して2021年度に新築マンションを買った人の平均価格は4528.5万円、うち自己資金は785.9万円で、1カ月の返済額は12.36万円。首都圏に限れば購入価格は4992.7万円で、自己資金は877.8万円に増える。しかも、平均すると全国平均では44.0歳で買っていて、平均返済期間は31.6年なので、75歳まで返済が続くことになる。現実的には、それまでに繰上返済などで早めに終われる人が多いだろうが、自己資金をつくるのに5年や10年はかかるから、数字上は住宅ローンに一生を左右されるといっても大げさではない。

 それに対して500万円で家が建てば、マンションを買うときの自己資金で買うことができるようになり、クルマを買うのと同じような感覚で自由に買い換えていくことなども可能になるはず。広く知られるようになれば、市場が急速に拡大するのではないか。

 ただ、建物は500万円で取得できるとしても、問題は土地をどうするのかという点だが、リゾートであれば、田舎に安い土地を入手できるだろうし、相続で得た田舎の空き家を解体して、500万円の家を建てるなどの方法が考えられる。若い世代であれば、郊外や地方に安い土地を取得して500万円で家を建ててはどうか。幸いといっても何だが、最近はリモートワークが可能な企業が増えているので、東京などの会社に籍を置きながら地方に住むことが可能になっている。

 遠隔地であれば、二束三文で取得できる土地もあるはず。地方の町村では、土地を無償で貸与するので、そこに家を建てて住めば、一定期間後に土地を無償で譲渡するなどの制度を実施しているところもある。タダで土地を取得して、500万円で家を建てることができれば、ローンの必要もなく、幸せな人生を送れるのではないか。

 しかも、国策として地方創生がうたわれ、地方への移住者には移住支援金が出るなどの支援策も実施されており、いまなら100万円が支給される。住まいに500万円かかったとしても、支援金でその一部を取り戻すことができ、負担感が軽減される。

 また、シニア向けとしても注目される。子どもたちが独立したあと、夫婦二人の生活を考えれば、50平方メートル程度の平屋でもOKというか、そのほうがバリアフリーを考えれば生活しやすい住まいになるのではないか。マンションの持家であれば、売却して土地を買って500万円の住まいを建てる、一戸建ての持家であれば、解体して500万円の住まいに建て替えるなどの形が考えられる。実際、これまでのところシニアからの問い合わせが多いというのもうなずける。円形なので、地震などに強く、平屋なのでバリアフリーであり、多少体が不自由になっても、安心して快適に住める可能性が高い。

 ライフスタイルの多様化のなかで、そうした選択を考える人が増加するとみられるだけに、アピールの仕方しだいで、500万円住宅には注目度が高まるのではないか。
文・Business Journal編集部、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト/

提供元・Business Journal

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