■偽の求人で売春を強制
とにかく金儲けがしたかったゴンザレス姉妹は、やがて酒場ではなく売春宿を経営することを思いついた。うるさい警察には、「抜群」だと噂の彼女たちのテクニックを使い、体で賄賂を支払いながら50年代に売春宿を次々と立ち上げた。グアナファト州のサン・フランシスコ・デル・リンコン、プリシマ・デル・リンコン、レオン、ハリスコ州のエル・サルト、サン・ファン・デ・ロス・ラゴス、ケレタロ州のサン・ファン・デル・リオ――。売春小屋は、先進国の人間からしてみると、近づくのもためらうような不衛生極まりない悪臭漂う祖末なトタン小屋だったが、姉妹にとっては金を生み出す豪邸にほかならなかった。
デルフィナ、マリア・デ・ヘスス、マリア・デ・カルメンの3人は、グアナファト州とハリスコ州の売春宿を担当、マリア・ルイーサは少し離れたケレタロ州の売春宿の女主人となった。そして姉妹は、ハリスコ州の観光地ラゴスのバーをゲイのオーナーから買い取るなど、売春宿以外にもビジネスを広げていった。
姉妹は田舎街の地元新聞の求人欄で「都会のバーやレストランでメイドとして働く若い女性」を募集。面接は売春宿のスタッフが行い、魅力的な外見の女性だけを選び、「高給高待遇」「暮らす場所も提供する。まるで自分の家のように過ごせますよ」と甘い言葉を並べて採用した。
しかし採用された女性たちは、そのほとんどがサン・ファン・デ・ロスラゴスに送られ、姉妹が経営する第二の売春宿で娼婦として働くよう強制されていた。バーでウェイトレスとして働かされた幸運な女性は一握りにすぎず、40~80ドルの値段をつけられ、別の経営者による売春宿へと売り飛ばされる女性もいたという。面接で集めた女性だけでなく、当時デルフィナと交際していたヘルメネギスド・スニガや、親交があった軍属の男に誘拐されてきた女性もいた。彼女たちは売春宿で働かせられるのだと知ると激怒し、抵抗したが、姉妹はこん棒で殴ったり、重いレンガをいくつも体の上に置いたり、氷水を大量に浴びせられるなどの拷問を行った。この拷問は、娼婦として働くことに合意するか、もしくは死ぬまで行われた。また、コカインやヘロインを無理矢理打ち、依存症にさせることで、抵抗できないようにすることもあった。
■売春でボロボロになった女は容赦なく“処分”
それぞれの売春宿に運び込まれた新人たちは、まず処女かどうかを調べられたという。処女ならば金持ちの上客向けに“保管”され、処女でない者はすぐに男の性欲処理をさせられた。
劣悪な環境で、ドラッグを打たれながら男たちの相手をする女性たちは、5年もすると別人のようにボロボロになった。女性たちには、わずかな報酬が支払われたが、洋服代、化粧代という名目で減額され、手元にはほとんど残らなかった。そして外出するときは、姉妹の誰か、もしくはブラック・イーグルと呼ばれていたヘルメネギスドが必ず付き添った。さらにデルフィナの息子ラモン・トレスも監視役として目を光らせていたため、女性たちは逃亡することなどできなかった。
身も心もボロボロになり、女性としての魅力は失せ、男たちの食指が動かなくなると、姉妹は躊躇なく彼女たちを殺した。STD(性感染症)など明らかな重病者は、狭い個室に閉じ込め餓死させたり、ほかの女性たちに撲殺させることもあった。遺体は、姉妹とヘルメネギスドが始末していた。1人ずつ、もしくは焼いて骨にしてから一カ所にまとめて埋めたりした。数が増えるとともに、ひどい悪臭が立ち込めるようになり警察にも不審に思われたが、「動物の死骸」だとごまかし、賄賂を渡して捜査しないよう頼んだ。さらに、地元の政治家にも賄賂を渡して警察に圧力をかけさせた。
■逃げ出した娼婦の証言ですべてが明るみに!
ところが1963年、売春宿内で地元警察官と口論になったラモンが銃殺されるという事件が起こる。デルフィナは怒り狂い、ヘルメネギスドや彼の手下たちに「息子を殺した警官を探し出し、その場で射殺しろ」と命じた。
それから間もなくして、姉妹を再びトラブルが襲う。娼婦の1人、カタリナ・オルテガが、壁にできた小さな穴を力づくで広げて脱走してしまったのだ。姉妹は血眼になってカタリナを探し、すぐに殺すつもりだった。しかし、カタリナは幸運なことに彼女たちに見つかることなく母親のもとへと逃げ込み、警察に身柄を保護してもらうことに成功。たまたま、姉妹たちから賄賂を受け取っていない警官が担当したため、捜査はスムーズに行われた。そして警察は、売春宿に閉じ込められ、おびえている女性たちを発見。痩せこけ、ボロボロな服を身にまとう彼女らは、みな一様にゴンサレス姉妹は悪魔だと叫んだ。
やがて女性たちは、警察に遺体が埋められている場所を教えた。遺体のほとんどが、売春を強制させられていた女性だったが、金目当てに殺害された客もいた。そしてゴンザレス四姉妹が、出稼ぎから帰ってきたばかりの男たちに麻酔薬入りの飲み物を振る舞い、殺して金銭を奪い取っていたことも明るみに出た。
■激怒した民衆が押し寄せる!
国境を越えようとして逮捕されたデルフィナ、マリア・デ・ヘスス、マリア・デ・カルメンの3人は、逮捕時に黒い服を着用し、頭には黒いベールをかけていた。その理由について、「ラモンの死を悼み、喪に服しているからだ」と説明したという。そんな彼女たちがレオンの警察署の拘置所に移送されると、怒りに満ちた民衆が殺到。「娘が行方不明になった」という近くの村人たちも押し寄せ、「リンチさせろ!」と大騒ぎになった。このままでは暴動になると懸念した警察は、3人の身柄をサン・フランシスコ・デル・リンコンの刑務所に移送するが、ここにも激怒した民衆が押し寄せたため、最終的にイラブアト市の刑務所で拘束されることになった。
3姉妹の逮捕から1週間後、ケレタロ州の売春宿を1人で切り盛りしていたマリア・ルイーサが、メキシコ・シティの警察署に出頭した。彼女は事件には無関係だと主張したうえで、「でも姉妹であることに変わりはないから、リンチされるのではないかと心配で……」と説明したが、結局グアナファト州の要請を受けてイエアブアト市へと移送され、逮捕された。
■裁判も大荒れ
売春宿から救助され、保護された女性たちは、姉妹のことを強姦罪・殺人罪・恐喝罪で起訴した。「ゴンサレス姉妹は、金もうけのため悪魔に魂を売った、悪魔崇拝者だ。一部の女性に、動物との性交渉を強要したり、拷問したり、殺害したりした」と訴えた。さらに姉妹たちは、売春宿やバーの常連だった警官らに賄賂を送った罪にも問われた。
裁判は、遺族や被害者女性たちの罵声が飛び交う中で行われた。「死ね!」「地獄に堕ちろ!」「リンチさせろ!」という叫び声が上がる中、姉妹は冷静沈着に全員が無罪を主張した。「食べ者が体に合わなかったのでは? みんな自然死ですよ」と冷ややかに言い放った。
この騒動を早々に収拾するべく、裁判官は姉妹に対して、当時のメキシコの法で最高刑にあたる禁錮40年という判決を下した。
■悪魔の四姉妹、その最期
服役が始まると、高慢な態度をとっていたデルフィナは「この刑務所で殺される」という妄想に取り憑かれ、精神に異常をきたし、暴れ回るようになった。そして1968年10月17日、いつものように奇声を上げながら暴れている彼女の頭に、上の階で見物しながら作業中だった囚人が持っていたコンクリートのブロックが落下して命中。命を落とした。
マリア・ルイーサも同様に「自分は殺される」と怯え、精神に異常をきたした。そして1984年11月19日、独房で死んでいる姿が発見された。遺体の一部はネズミに齧られており、無惨な姿だったと伝えられている。
そして、マリア・デ・カルメンもガンを患い獄中で死去。末っ子だったマリア・デ・ヘスス・ゴンサレスのみ刑が短縮され、極秘裏に出所していたことが後に明らかになった。彼女は刑務所で知り合った64歳の男性と結婚し、その後の人生を隠れるように暮らしたが、90年代に老衰で死去したと伝えられている。
2002年、事件の現場となったプリシマ・デル・リンコンに公営団地を建てる計画が立ち上がった。しかし、建築のために土を掘り返したところ、またも人間の頭蓋骨がごろごろと出てきた。その数は20を超え、ゴンザレス四姉妹による犠牲者数は100人を超えることが判明、メキシコ中を改めて震撼させた。
参考:「Murderpedia」、ほか
※当記事は2016年の記事を再編集して掲載しています。
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提供元・TOCANA
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