軍用時計にルーツをもち、計器としての魅力にあふれたタイムツールで人気を集めてきたパネライ。近年は時計ツウだけでなく、ファッション好きも含めたより幅広い層にアピールするプロダクトが増えており、ブランドイメージもかつてのワイルドなものから、よりスマートで洗練されたものに変化しつつある。

そのイメージ戦略で重要な役割を担っているのが、クリエイティブディレクターのアルバロ・マッジーニ氏だ。広告代理店出身の彼は、かつて男性用高級品のクリエイティブ戦略に特化したスタートアップを起業し、ロジェ・デュブイやジャガー・ルクルトでクリエイティブ職を担当していた実績がある。

【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

クリエイティブディレクターのアルバロ・マッジーニ氏

2019年にパネライのクリエイティブディレクターに就任してからは、広告デザインのほか店舗デザインにも関わっており、“Modularità Espressiva”(表現力豊かに)というコンセプトをもつジュネーブの旗艦店のデザインも担当。大きなビデオウォール、時計のディテールを表示するTVスクリーンやタッチスクリーンモニターなどハイテクを随所に取り入れつつ、1956年のベスパやイタリアンヴィンテージ家具をセンス良くディスプレイし、伝統と革新をハイブリッドさせた内装で大きな話題を集めている。

【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)
【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

パネライがジューネーブにオープンした旗艦店

日本ではパネライ神戸などのブティックで氏のディレクションによるデザインが採用されており、インテリアのみならずオブジェ、音楽、匂いに至るまで、そのディレクションは徹底した美学で貫かれている。目下開催中のWatches & Wonders 2024のパネライブースも、もちろん氏の手によるものだ。

【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

2024年3月に新たなコンセプトのもとリニューアルした広島ブティック

【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

Watches & Wonders 2024のパネライブース

そんなマッジーニ氏に、パネライというブランドが掲げるショップデザインのコンセプトや、今後目指していく方向性について話を聞くことができた。ハイテク素材の積極的な採用や、イタリアのセーリングチーム“ルナロッサ”とのコラボレーションなど、よりスポーティブでポップなアプローチが目立つ最近のパネライだが、マッジーニ氏の手によるショップの雰囲気そのものが新たな方向性を示唆しており、その動向からは目が離せない。

ーー時計業界の中でパネライというブランドは、他ブランドとどこが異なるのでしょうか? どういうところがアドバンテージになっていると考えますか?

「パネライはイタリアのデザインの伝統で際立っており、この美的感性とスイスの技術的専門知識を融合させて独特のブランドアイデンティティを生み出しています。イタリアのDNAを誇り、そのデザインは豊かな文化的背景から生まれています。イタリアの創造性とスイスの精密さの組み合わせにより、ユニークなブランド提案が生まれます。 形と機能の統一を強調するパネライのデザイン哲学は、ブランドの起源に根ざしており、すべての時計がその意図された目的を反映しています。このアプローチは、パネライの保護されたデザイン商標と相まって、イタリア軍の独占サプライヤーとしての歴史に由来する独自性を強調し、現在ではイノベーションとテクノロジーへの献身へと進化しています」

ーー日本国内の神戸、名古屋、大阪などの店舗デザインもあなたのディレクションによるものですが、以前のパネライの内装とかなり印象を異にしています。パネライ店舗のデザインに関するグローバルコンセプトはどのようなものですか?

「神戸、名古屋、大阪を含む世界中のパネライ ブティックのデザインは、イタリアの伝統、航海の世界、現代のヒーロー、技術革新を織り交ぜたグローバルコンセプトを反映しています。このアプローチはお客様にとって魅力的な物語を生み出し、従来の小売を超えた没入型体験を提供します。
象徴的なルミノールのウォールクロックから、素材や色の思慮深い使用に至るまで、それぞれの要素がパネライの核となる価値観とストーリーを明確に表現しています。ブティック全体でメインカラーとして使用されているブルーは、パネライのDNAの中心である海に敬意を表しており、ブランドの航海精神に生命を吹き込むマリンテイストの装飾が引き立てられていま」。

ーーパネライに対してはタフでマッシブなイメージが強いのですが、今後どのようなビジョンをもって時計を開発していくのか、あなたの考えを教えてください。あなた自身はブランドのイメージをどのように捉えていて、今後どういう方向に舵を取りたいと考えますか?

「私たちの目標は、パネライの伝統、イノベーション、パフォーマンス、冒険の最前線とのつながりを深めることです。私たちは、革新、勇気、冒険、現代のヒーローのコンセプトを伝えるビジュアル表現を通じて、サブマーシブルやルミノールをはじめとするパネライのコレクションを伝えることを目指しています。私たちはパネライを時計メーカーとしてだけでなく、歴史あるイタリア海軍の伝統と開拓者精神を反映した精密機器のクリエイターとして紹介することに重点を置いています」

【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

最新のビジュアル表現

「Watches & Wonders 2024では、パネライは時計製造の専門知識とルナ・ロッサ プラダ ピレリ チームの航海能力の融合を鮮やかにカプセル化した空間に来場者を招待します。560平米にわたるこのブースの建築は、ルナ・ロッサ格納庫のインダストリアルな美学を反映しており、パネライの洗練された感性によって高められています。この体験の中心となるのは、カリアリからジュネーブまで輸送され、頭上に吊り下げられ、人々を魅了し、インスピレーションを与えるルナ・ロッサのトレーニングボートです。今回は、現代の実験室の精密さと機能を思い起こさせる環境の中で、最新のルナ・ロッサ コレクションにスポットライトを当てます」

【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

「私たちのプレゼンテーションは、パネライとルナ・ロッサ プラダ ピレリ チームのコラボレーションの精神を体現しており、ボート格納庫と時計製造の世界を融合させ、人間の創造性と技術スキルの相乗効果を強調しています。
ヌーシャテルにマニュファクチュールを設立して以来、パネライは時代を超越したデザインと最先端の製造を融合させ、時計製造の限界を突破する先進的なムーヴメントの開発を主導してきました。訪問者は、サブマーシブル ルナ・ロッサ コレクションを詳しく見ることができ、極限の環境下での使用を想定した厳格な品質テストなど、パネライの時計の背後にある技術的卓越性を発見するでしょう。 耐久性と精度へのパネライの取り組みを示すこの透明なショーケースは、Ti-Ceramitech™などの新素材の導入によってさらに強化され、鮮やかなビジュアルとインタラクティブなディスプレイを通じてパネライの革新的な精神を強調しています」

なおパネライは、現在開催中のWatches & Wonders 2024にて、新作サブマーシブル トゥールビヨンGMT ルナ・ロッサ エクスペリエンス エディションと、サブマーシブル クアランタクアトロ ルナ・ロッサ Ti-Ceramitech™のリリースを発表。特に前者はスポーティブなカーボンケースにトゥールビヨン機構を盛り込んだ意欲作で、パネライのイノベーティブな方向性を感じさせる。今後の取り組みにも期待が高まるところだ。

【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)
【パネライのクリエイティブディレクターが語る】次世代に向けたブランド戦略
(画像=『Watch LIFE NEWS』より 引用)

【問い合わせ先】
オフィチーネ パネライ TEL.0120-18-7110

文◎巽 英俊

提供元・Watch LIFE NEWS

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