【魅力あるクルマ】 Sクラス譲りの最新技術を積極投入。メルセデス・ベンツCクラスの完成度
(画像=メルセデス・ベンツC200アバンギャルド/価格:9SATC 698万円。写真はAMGライン(36万3000円)+リア:アクスルステアリング(16万2000円)装着車。5世代目となる現行Cクラスは2021年に日本上陸。ボディタイプはセダンとステーションワゴンを設定。全車4気筒エンジン搭載、『CAR and DRIVER』より 引用)

Cクラスはブランドの中核モデルに成長

 1980年代初頭に登場するや、190シリーズはいろんな意味で話題になった。メルセデス・ベンツ初のコンパクトクラスであり、日本では「小ベンツ」と親しみを込めて呼ばれていたものだ。

 190シリーズは上級クラスに勝るとも劣らないサルーンだった。W124型Eクラスと同様にエンジンよりボディ&シャシーが優っていた。そのライドフィールは秀逸。いま乗ってみても現役として十分通用しそうなくらいだ。

【魅力あるクルマ】 Sクラス譲りの最新技術を積極投入。メルセデス・ベンツCクラスの完成度
(画像=メルセデス・ベンツ190E(W201)は1982年、メルセデス初のコンパクトモデルとしてデビュー。日本発売1985年モデルから。190Eが登場した当時、メルセデスはSクラス/Eクラス/SLクラスの上級車専門メーカーだった。190は日本の5ナンバー規格に収まるボディに、上級車そのままの高度な設計を盛り込んだ意欲作。主力グレードは2リッター直4ユニット搭載していた、『CAR and DRIVER』より 引用)

 190シリーズはW201という開発コードが与えられていた。1993年に登場した初代Cクラスがそれに続くW202と呼ばれ、現行はW206、Cクラスはすべて「W20X」の表記である。190シリーズこそがCクラスの元祖である証のひとつだ。

 いずれにしてもCクラスは、190も含めてこの40年間に渡り、BMW3シリーズとともにDセグメント界のベストセラーあり、基準となってきた。とくに先代に当たるW205は高い評価を受け、日本でも10万台以上を販売するなど、SUV全盛の時代にあって異例の人気を博した。Cクラスとしては第5世代となる現行モデルは正常進化を軸に、デザインや電子プラットフォームを最新世代とした意欲作である。

【魅力あるクルマ】 Sクラス譲りの最新技術を積極投入。メルセデス・ベンツCクラスの完成度
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 最新Cクラスでは全グレードの電動化を達成。さらにデジタル装備関連ではフラッグシップモデルのSクラスから多くの最新テクノロジーを譲り受けた。最新式の運転支援システムはもちろん、片側130万画素のLEDヘッドライトやARナビゲーション、リアアクスルステアリングなどがそうだ。

 内外装の基本デザインもSクラス譲り。思い返せばこれほどSクラスと名実ともに共通項が多いのは190シリーズ以来だろう。見た目のみならず中身に至るまで上級クラス譲りの性能及び機能であるということこそ、メルセデスのコンパクトモデルの凄みというものだ。

最新メルセデスの魅力を凝縮。プレミアムカーらしい奥深さが魅力

 メイングレードというべきC200に乗ると、メルセデスを代表する1台であることが理解できる。パワートレーンは、M254型1.5リッター直4ターボ(204ps/300Nm)に15kWの電気モーターを加えた48VのマイルドHV(ISGシステム)だ。

 ボディサイズは4785×1820×1435mm(AMGライン)。全長と全幅が従来比で少し大きくなった。それでも最小回転半径は小さくなっている。リアアクスルステアリングなしでもそうなのだ。大型化への非難を和らげるために、できるだけ機動力を向上させたい、という開発陣の思いの表れだろう。さすがに重量増こそ免れなかったものの、日常の使い勝手がよくなっている点は評価できる。

 走り出してすぐにモダンで洗練されたドライブフィールに感心した。旧型に比べ、明らかに出足が鋭く、常用域におけるトルクの厚みもはっきりと頼もしい。中間加速も力強さが増しており、全域にわたって扱いやすい。旧型C200との差は歴然としている。

 電気モーターをエンジンとトランスミッションとの間に組み込んだことで、より効率的にアシストできるようになった効果だ。エンジン再始動時の振動は皆無。回生ブレーキやコースティングのスムーズさも素晴らしい。

【魅力あるクルマ】 Sクラス譲りの最新技術を積極投入。メルセデス・ベンツCクラスの完成度
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【魅力あるクルマ】 Sクラス譲りの最新技術を積極投入。メルセデス・ベンツCクラスの完成度
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 峠道を攻め込んでみる。C200は、決してスポーツ性が売り物になるようなセダンではない。にもかかわらず、ハンドリングは正確で、足回りはよく動き、安心して踏み込んでいけた。懐が深く、スポーツ派ドライバーが頑張って走るレベルではまず破綻しない。このあたりもシャシー性能の高さを物語る。全域における安心感の源だ。

 不満があるとすれば、それは常用域におけるブレーキフィールくらいだろうか。軽く踏んで減速したいような場合に限って望んだほど減速しない場合があった。思いどおりに制動力を立ち上げるにはコツが必要。ちょっと難しいブレーキフィールだった。

 高速走行時の直進安定性は予想どおり素晴らしい。安定感はほとんどEクラスレベル。とくにリアステア付き仕様は安心感も顕著だった。サイズが少し大きくなったこともあって、新型CクラスのライバルはEクラスだ、と思ったほどだ。

 ドライブフィールそのものは、熟成の進んだ旧型の最後期モデルも捨てがたい味わいがあった。とはいえ「まったり」とした新型は、プレミアムモデルらしい奥深さを旧型にも増して感じる。よりメルセデスらしい。いまやFFベースのAクラス系にも、昔のCクラスサイズのセダンが存在する。だが乗り味で選ぶなら俄然、FRベースのCクラスだろう。

 昨年末には、デビュー当初話題をさらったPHEVモデル、C350eスポーツが、ようやくラインアップに加わった。350eは2リッターターボ(204ps)と95kWのモーターを組み合わせ、EVとして110kmも走る。通常シーンは、BEVとして使え、長距離走行も苦にしないオールラウンダーである。Cクラスの真打ち、といいたいところだが、その価格は995万円。「いいものは高い」、ということは理解しているが、少しお勧めしづらい。