【魅力あるクルマ】SUBARUレヴォーグ・レイバックは、どこかに出かけたくなるクルマの筆頭である
(画像=SUBARUレヴォーグ・レイバック・リミテッドEX/価格:8CVT 399万3000円。レイバックはレヴォーグ比で車高を高め、最低地上高200mmを確保。駆動方式はもちろん4WD。アイサイトは前方の認識能力を大幅に高めた最新世代。クラストップの安全・運転支援機能でドライバーをアシストする、『CAR and DRIVER』より 引用)

安心・安全と快適なGT性能がベストマッチ

 スバルの「ツーリングワゴン」と聞けばすぐにレガシィの名を思い起こすだろう。実は、この名前が初めて用いられたのは1981年、2代目レオーネ時代に設定された4WDワゴンが登場したときのことだった。そう、ツーリングワゴンのコンセプトは、まだ「無骨」なデザインだった時代のスバルによって生み出されたものなのだ。

 そんなスバルの原点が「てんとうむし」と呼ばれた360(1958年登場)にあることはご存じのとおり。かつて航空機開発に従事していた技術者たちが生み出した360に「安心・安全」な思想が息づいていたのは当然のことで、これを発展させた1000(1966年登場)に、直進安定性に優れた前輪駆動方式や低重心の水平対向式エンジンが採用されたことも、技術的に必然の選択だったと考えられる。

【魅力あるクルマ】SUBARUレヴォーグ・レイバックは、どこかに出かけたくなるクルマの筆頭である
(画像=スバルのアイデンティティ、「水平対向エンジンとシンメトリーAWD」とワゴンボディの組み合わせは1981年登場のレオーネ・ツーリングワゴンから。1989年の初代レガシィでは200psを誇るターボエンジンを搭載したGTグレードを新設。「全天候型スポーツワゴン」として一世を風靡した、『CAR and DRIVER』より 引用)

 そうした思想は現代のスバルにも脈々と受け継がれている。では、レオーネからレガシィへの進化が何を意味していたかといえば、「安心・安全」に「GT」、すなわちグランツーリズモの概念がプラスされたことにあった。

 レガシィは、1000から培ってきた2リッター水平対向エンジンにターボを追加して200psのハイパワーを実現。前輪駆動はさらなるトラクションを求めてフルタイム4WDに進化した。そして、これらのテクノロジーがステーションワゴンと巡りあったときに「高速ツーリングワゴン」という新たな価値が生まれ、これがレガシィ・ツーリングワゴンとして結実したのである。

 こうして誕生したレガシィ・ツーリングワゴンはアメリカ市場などからの要望を受けて徐々にサイズを拡大。その結果、狭い路地が少なくない日本の道路環境を考えると、やや使い勝手が悪い状況となっていった。そこでツーリングワゴンの思想はそのままに、全幅を1.8m前後まで凝縮したモデルをレヴォーグとして発売したのである。このコンセプトが絶大な支持を集めたのは当然で、2020年には2代目レヴォーグへと進化。さらに、これをベースとしてSUVのテイストを付け加えたのが、レヴォーグ・レイバックである。

「ツーリングワゴン」の思想に走破性をプラス。レイバックは上質さと行動の自由を融合

 レイバック最大の特徴は、最低地上高をレヴォーグの145mmから200mmへと拡大した点にある。ちなみに200mmの最低地上高は、レイバックよりもはるかに背の高いSUVと同等の数値。レイバックが本格的なオフロード性能を備えていることの証拠ともいえる。
 最低地上高の55mm拡大は、タイヤサイズをレヴォーグの225/45R18から225/55R18に変更するとともにサスペンションの設定を見直したことによる。

【魅力あるクルマ】SUBARUレヴォーグ・レイバックは、どこかに出かけたくなるクルマの筆頭である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【魅力あるクルマ】SUBARUレヴォーグ・レイバックは、どこかに出かけたくなるクルマの筆頭である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 この結果、乗り心地はレヴォーグよりもソフトで快適になった。路面の段差などで、レヴォーグだったらズシッという軽いショックが伴った場面でも、レイバックは何ごともなかったかのようにスッと通り過ぎてくれる。

 足回りがソフトになったと聞けば、高速域やワインディングロードでのスタビリティが心配になる。この点、レイバックはどうだったのか?
 率直にいって、高速道路をクルージングをしていても、ボディがフワつくとか、ステアリングが定まらないというような挙動はいっさい起きない。一方、ワインディングロードに場面を移しても、ステアリングを切り始めてから姿勢が落ち着くまで待つ必要はなく、自然な感覚でコーナリングを楽しめる。このあたりは、重心が低い水平対向エンジンも効いているのだろう。

【魅力あるクルマ】SUBARUレヴォーグ・レイバックは、どこかに出かけたくなるクルマの筆頭である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【魅力あるクルマ】SUBARUレヴォーグ・レイバックは、どこかに出かけたくなるクルマの筆頭である
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 パワートレーンは、1.8リッターターボにリニアトロニックと呼ばれるCVTを組み合わせた構成。最高出力177ps、最大トルク300Nmのスペックは特別パワフルとはいえないけれど、ワインディングロードの上り坂や高速道路を含め、物足りないと感じるようなシーンは一度もなかった。  また、おっとりとしたレスポンスが指摘されることもあるCVTにしても、ゆったりとクルージングする範囲でいえばなんの不満も覚えない。

 一方、ワインディングロードなどで活気ある走りを楽しみたい場合は、マニュアルモードで積極的にエンジン回転数を高めに保つことで、レスポンスのいい加速感が味わえる。フルタイム4WDがもたらすスタビリティ感を含め、私には完成度の高いパワートレーンだと思えた。

 近年、スバルの「安心・安全」を最も明確に体現している装備といえば、先進運転支援システムのアイサイトだろう。レイバックには、視野をさらに広角化したステレオカメラに超広角の単眼カメラを追加し、これまで以上に広い視野ときめ細かな検知能力を実現したアイサイトXが標準装備されている。メーカーが発表したデータによれば、アイサイト搭載車の追突事故発生率は0.06%と驚くほど低い数値である。

 前後のデザインを中心にSUVらしい装いを手に入れながら、装備内容を工夫することで価格を300万円台に抑えたレイバック。スバルの「安心・安全」思想が詰まったツーリングワゴンの進化形としてお勧めしたい1台である。