【クルマの通知表】「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたBMW X1のクリエイティブ能力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

BEV、ディーゼル,ガソリンが選べる実力派SUV

(本文)

BMWは、自社のSUVをライバルはひと味違うクルマという意味で「SAV(=スポーツ・アクティビティ・ビークル)」と呼んでいる。そのエントリーモデル、X1の最新版が昨年登場。「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。

外見は大きなキドニーグリルと個性的な意匠のライトが印象的。全体のフォルムは力強く、エントリーモデルらしからぬ風格を感じさせる。ボディサイズは4500×1835×1625mm。全幅が1835mmにとどめられたの、日本では歓迎すべきことだ。全高も1645mmとそれほど高くなく、一方で最低地上高は205mmとたっぷり確保している。

X1は共通の車体でガソリン、ディーゼル、BEVを用意するマルチモデル。今回は販売主力のディーゼルを借り出した。20dを名乗るディーゼルは、写真のMスポーツと、エレガントなXラインの2つのタイプが同価格で選べる。

【クルマの通知表】「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたBMW X1のクリエイティブ能力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【クルマの通知表】「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたBMW X1のクリエイティブ能力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

室内はモダンな印象。インテリアのデザイン性とクオリティ感は高く、これまたエントリーモデルらしからぬ印象だ。ドライバーを囲むように湾曲したBMWカーブドディスプレイは見やすく、機能も満載。スマホのように車両に関するアプリを一覧表示できる。モード選択により、メーター表示と車内空間の演出を6通りから選べるのも特徴だ。

インパネの中段には、エアコン送風口を配置。握りの太いステアリングホイールはBMWならでは。一方でセンターコンソールからシフトレバーやiDriveコントローラーがなくなったのも新世代を感じさせる。

収納スペースがこれ以上ないほど豊富に設定され、さまざまな工夫が見られるのも素晴らしい。最近のBMW車に装備されるようになったスマホ充電トレイは、充電しながら画面が見られるレイアウト。ズレないようにするためのサポートが付き、冷却機能まで備えている。フローティングしたセンターコンソールの上部には薄い小物が置ける。ドア側の大容量のストレージも同様だ。

ドライビングポジションは自然。ややアップライトなドライビングポジションにより見晴らしもよい。フロントピラーの付け根周辺の死角がやや大きめではあるが、基本的に良好な視界が確保されている。

【クルマの通知表】「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたBMW X1のクリエイティブ能力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【クルマの通知表】「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたBMW X1のクリエイティブ能力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

BMWはかつてFR車しか作らないと公言していた。2010年に登場した初代X1はクラス唯一のFR車で、そこに共感するユーザーも多かった。ところが、その後BMWは方針を変え、X1も2015年登場の2代目からはFFベースになった。理由はFFベースだと後席の居住空間や荷室を広く確保できるから。このカテゴリーは駆動方式にこだわるよりも実用性を求めるユーザーが圧倒的に多いことを受けての方針転換だという。

実際、新型も居住性は十分に確保されている。後席は前後スライドやリクライニングができるほか、3分割構造でセンターだけ倒せるようになっている。荷室も広い。後席使用時に540リッターの容量を持ち、リアタイヤハウス後方の横幅も十分。デザインコンシャスなX2も用意するので、X1は広さを求めたパッケージングとしたに違いない。

BMWらしい走り味。ディーゼルはパワフルでしかも静粛

新型X1は新開発プラットフォームの採用したクラス初のBMWである。これまでも他のパワートレーンを含め何度も試乗してきたが、あらためてドライブした印象は上々だった。
Mスポーツに標準のアダプティブMサスペンションは、姿勢を乱さないよう動きを抑えた中で、よく動いて路面からの入力を巧く吸収している。やや縮み側が硬い印象があり、多少のコツコツは感じるが、乗り心地とのバランスは悪くない。一体感のある軽快な走りは大きな美点だ。

【クルマの通知表】「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたBMW X1のクリエイティブ能力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【クルマの通知表】「2023-2024インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたBMW X1のクリエイティブ能力
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

高速巡行時にはフラット感があり、安定性も高い。まるでひとクラス上のクルマに乗っているかのような上質感がある。運転支援機能を使わなくとも直進安定性は高く、リラックスして乗っていられた。

X1にはハンズオフ機能やレーンチェンジをアシストする機能まで設定されている。追従時の車間距離の間隔が任意に選べずクルマ任せというのには少々戸惑ったが、各種制御は的確、よくできている。

2リッターディーゼル(150ps/360Nm)は48Vマイルドハイブリッド(モーター:19ps/55Nm)仕様で、DCTが苦手とする細かい動きの領域を巧く手助けしている。

走りは、加速の始めのごく初期だけひとクセあるが、そこから先の常用する領域ではリニアで実に力強い。静粛性もなかなかのレベル。車外ではかすかにディーゼルとわかるものの、車内にいると実に静かだ。

タコメーターのレッド破線の表示が5000rpm~となっているとおり、ディーゼルながら回して楽しめるように味付けされているのもBMWらしい。Mスポーツにはパドルシフトが付き、最大で10秒間作動させることのできるブーストモードも設定されている。BMWはSAVでも「駆けぬける歓び」を忘れていない。