しかしどちらかというと、AIが人間に代わり仕事をこなしてくれるようになり、人々は働かなくていい時代が来る。ユ-トピアが待っているというのが専門家達の見解だ。これは一見聞こえがよいかもしれない。しかし、生きがいの喪失などの深刻なリスクも想定されている。

たとえば本や音楽、映画、アート全てにおいてAIが人間を凌駕し、何をやっても人間は太刀打ちできない。そのとき人類は何を生きがいにし、どう生きるのか-。我々は問われることになるというわけだ。

しかし実は、そんな時代が来る前に訪れる大きな危機がある。それは過渡期にともなう大きな変化だ。

AIを活用する人が、そうでない人々を置きかえる時代。多くの人が仕事を奪われ、とんでもないことになる。これが専門家の見解なのだ。しかもこの変化は2040年、50年の話ではない。むしろ2~3年以内に訪れるとされている。

たとえばChatGPT-4の10倍の知能をもつChatGPT-5がリリ-スされた世界を想像してみてほしい。現状でもビジネス書1冊を書き上げる知能を有するのに、そこからさらに10倍だ。

AIを使いこなせるか否かで仕事の生産性にとんでもない格差が生まれる。これは想像に難くない。AIを使いこなせない人は失職する。このことも間違いなさそうだ。私でさえ、このことに恐怖を感じている。

ただひとつだけ、私が人より優れていて頼りになると考えているスキルがある。それは(タスクを)実行する力だ。

実行力だけはAIに置きかえられない

いずれタスク管理もAIに任せられるようになるだろう。自分が抱えているタスクをAIに説明して、どの順番でどうこなしたらいいか教えてと言えば最適な順番で計画を作ってくれることはまちがいない。

AIの進化により、タスク管理能力に差は生まれなくなるはずだ。一方、明確な差が生じるのがAIに提案された計画を実行する力だ。

たとえばタスクAをこなせと提案されても、それを先送りしてしまえばいくら理想的な計画を提案されても意味がない。AIが先送りの衝動まで管理してくれるわけではないからだ。

つまり、少なくともAIが人間の仕事の全てを置きかえる時代がやってくる前、すなわち過渡期に(AIを使いこなすスキルとは別で)必要となる重要なスキルのひとつは実行力となるはずだ。

そういう観点で本書はこれからの時代を生き抜く武器になる。私はそう確信している。

滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

■先延ばしグセを辞めたいなら、村上春樹のように仕事に取り組め(滝川徹  時短コンサルタント) ■1つの仕事に30分以上かけてはいけない理由(滝川徹  時短コンサルタント) ■複数の仕事を同時並行で進める仕事術が最強の理由(滝川徹 時短コンサルタント) ■30分仕事術のススメ ~仕事は一気に片付けるより、毎日少しずつやるほうが早く終わります~(滝川徹 時短コンサルタント) ■仕事に意思は関係ない-先延ばし・先送りの画期的な解決方法「30分仕事術」とは?(滝川徹 時短コンサルタント) ■「朝礼は無駄」発言の若手社員を問題視する人達に欠けている視点。(滝川徹 時短コンサルタント)

編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月15日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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