流通プラットフォームも計画

IoTanicはまだ本格始動したばかりのスタートアップで、現時点で国外の投資家から巨額の資金調達を引き出したというわけではない。が、そのコンセプトはインドネシアの一次産業従事者が心の底から望んでいるものと見事に合致する。

畑そのものをスマート化し、今現在の状態をスマホアプリに表示する。さらにIoTanicが計画する流通プラットフォーム「TanicMarket」で、中間搾取を許さない公平な取引を成立させる。これにより生産者の収入は増え、作物の小売価格はむしろ安くなる。

インドネシアの農業の近代化を妨げている要因の一つが、中間業者の存在だ。1本の流通ルートに対して何人もの業者が介入し、その度にマージンを取るという構造が今でもある。それを変革するには、インダストリー4.0の概念を農業分野に適合させることが絶対条件だ。

出稼ぎに行かなくても済むように

IoTanicの本拠地がスラカルタという点も、見逃すわけにはいかない。

内資、外資問わず企業がオフィスを構える都市と言えば、インドネシアではジャカルタ、スラバヤ、工業団地を抱えるバタム島及びビンタン島、観光分野ではバリ島南部が定番である。これらの地域は、国内出稼ぎ労働者の受け入れ地でもある。が、そのために農村部の労働人口が流出、産業が空洞化するという問題が発生している。

「畑のスマート化」により、ジャワ島中部の農村が首都圏やバタム島の工業団地に勝るとも劣らない一大産業集積地に変貌するのだ。

参照:IoTanic

(文・澤田 真一)