トヨタ自動車の「アルファード」の人気が収まらない。昨年6月の新型車発売直後は注文から納車までのリードタイムが2年ほどになる事例も出て、受注停止の動きも広まった。現在も納車までに通常以上の時間を要するとトヨタはアナウンスしており、また価格が500~800万円台と高価なことから「手に入りにくい車」となっている。にもかかわらず街中ではアルファードを目にする機会が少なくなく、「どうやって入手しているのか」と疑問の声も一部ではあがっているようだ。そこで、専門家の見解を交えて追ってみた。

 2020~21年の年間販売台数が9万台を超えミニバンでは1位となっていたアルファード。22年には翌年に新型車の発売を控えていたことや受注制限があったことで6万台に落ち、23年も受注停止の影響もあり5万台となったものの、現在でもトヨタが「車種によっては当初予定の納期に間に合わない場合がございます。また、現在車両の購入をご検討中のお客様におかれましては、車両のお届けに通常以上にお時間を頂戴する場合がございます」(公式サイトより)と呼び掛けるほど人気が高い。

「国産のLクラスミニバンとして事実上のライバルとなるホンダ『オデッセイ』と比較すると、乗り心地などオデッセイが勝っていると感じる部分も多いものの、やはり主要ユーザーのファミリー層からは、室内空間の広さや使い勝手の良さといった“わかりやすいメリット”が受け入れられている。また、かつてアルファードはトヨペット店の専売だったが、2020年にトヨタ系ディーラー(トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店)全店舗での全車種併売化によりトヨタ系全店で買えるようになった点が大きい。これにより、同じトヨタの『クラウン』や『ヴェルファイア』、さらには『プリウス』や『アクア』のユーザーの一部がアルファードに流れ一時は『アルファード一強』といえる状況になった。

 加えてリセールバリューが高いという魅力もあるが、高額ゆえにディーラーが得られる利幅や信販会社からもらうバックマージンも大きいため、ディーラーが積極的にアルファードを売ろうとしているという面も大きい」(ディーラー関係者)

納車は早くても約1年後の25年3月?

 昨年6月には新型車が発売され注文が殺到し、20年頃から続いていた世界的な半導体不足のなかで納車が未完了の「受注残」が積みあがっていたことも影響して、一時は受注を停止するディーラーも出ていた。現在の販売店の現場における受注の受付状況や納期はどうなっているのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。

「現行型アルファード&ヴェルファイアは昨年6月の新型発売後、早々に納期見込みが1年を超えたため受注を止めました。先代モデルも人気が高かったのですが、22年春の時点ですでに納期が1年以上だったため、フルモデルチェンジの昨年6月までおよそ1年間、受注停止をしていました。人気車種であるがゆえ歴代保有台数が多く、ユーザーは新型車が登場するたびに買い替えていくケースも多いため、新型車の受注開始から短い期間で大量の注文が殺到し、あっという間に納期遅延状態になってしまうという現象が起こります。

 新車はディーラーごとに割り当て台数が決まっていますので、納期遅延が発生すると長期にわたって同様の現象が続きます。アルファード&ヴェルファイアの登録台数は1カ月あたり7000台前後と、プリウスやアクアと同等ですが、生産枠が抽選となることもあり、もし今契約ができたとしても納車は早くても約1年後の25年3月になる模様です。ちなみに、ディーラーによってはすでに来年夏頃までの枠が埋まっており(抽選はすでに終了)、次の新たな注文は24年9月以降であり、具体的なスケジュールは未定といわれています。

 これは捉え方によるところですが、前述のとおりアルファード&ヴェルファイアは生産台数が少ないわけではなく、受注件数に対して生産台数が足りていないのであって、生産供給の台数が少ないわけではありません。よって街中で新型のアルファード&ヴェルファイアの走る姿を頻繁に見たとしても、不思議ではありませんよね。

 なお、生産効率が落ちているかという点に関しては、コロナ以降の半導体不足などの影響が完全に解消されていないことや、配線関係(ワイヤーハーネスなど)や塗料などの供給不足も影響しているようです。納期遅れにはこういった要因も少なからず影響しているのかもしれません」