中央を崩す愛媛
2つ目は、2022年度のトップチーム人件費(当時J3所属)が2億7400万円で当時のJ3で6番目の数字だった愛媛FC。昨2023シーズンのJ3で優勝しJ2に復帰した昇格組ながら、現在は秋田と同じ4勝2分3敗でプレーオフ圏内まであと一歩の7位につけている。第6節以降4試合負けなしの2勝2分と好調で、第8節ではリーグ最少失点の仙台に2-1で勝利。第9節では現在3位のファジアーノ岡山と対戦。退場者を出しながらも後半アディショナルタイムまでリードを保ち、最後は力尽きたものの2-2の引き分けに持ち込んでいる。
愛媛の強みは中盤と組織力にある。昨シーズンのJ3でベストイレブンにも選出されたMF谷本駿介がボランチに君臨。ボールを奪う部分から攻撃の組み立てまでを行いつつ2得点3アシストを記録している。また、左右のサイドハーフに入るMF窪田稜やトップ下のMF石浦大雅は技術が高く、少ないボールタッチで繋ぎながらゴール前に迫る。ほかにも昨シーズンのJ3でMVPを受賞したFW松田力が最前線で献身的な守備をしながら2得点を記録。
2013年~2014年に愛媛を率いた経験を持ち、2022シーズンから第2次政権となっている石丸清隆監督は、J2でも屈指の組織力を植え付けることに成功している。チームが1つのまとまりとなって動き、全体で守備をしながらボールを奪い細かく繋いで相手を崩しにかかる。多くのクラブが突こうとするサイドではなく、ゴールに最も近い中央を積極的に攻略しようとするのも愛媛の特長だ。最終的に力負けする試合はあっても、今の愛媛はどこと対戦しても内容的にある程度拮抗させられるだけのものを持っている。
また若い選手が多く、今季の愛媛に注目すると数年後のJリーグも楽しめそうだ。つまりは来季以降、中心選手が他クラブに狙われる可能性も高いが、それだけ有望株が揃っているということでもある。現在すでに首位の清水、2位長崎、3位岡山との対戦を終えており、ここからさらに順位を上げることも十分考えられるだろう。昨季に続き今季も昇格となれば、2シーズンで2カテゴリー上昇も夢じゃない。
今回挙げた秋田と愛媛は開幕戦で対戦し、拮抗した試合ながら1-0で愛媛が勝利している。スタイルは全く異なるが、順調に勝ち点を重ねるこの2クラブ。今後どんな活躍で上位争いに加わるのか目が離せない。