20平米から1600平米に

たった20平米の倉庫から始まったKitaは、2023年10月にシードラウンド300万ドルの出資を得ることに成功した。

Image Credits:Kita

中古のピックアップトラックは、Kitaのロゴがペイントされた専用のトラックになった。倉庫も温度調整設備を備えた1600平米の巨大貯蔵庫兼オフィスに変貌。Kitaと契約する小売業者も、食品メーカーやレストラン、ホテルといった施設が名を連ねるようになった。何より、1万以上の農家がKitaを利用している点が最も重要である。

フィリピンはそもそも、気候にも土壌にも恵まれた土地で構成された島嶼国家である。農業分野は巨大な雇用を創出し、GDPを稼ぎ出すことにも貢献している。一方で、あまりに非効率かつ理不尽な流通過程が農業の発展を阻害していたのも事実だ。

新興国の農家にまとわりつく中間業者問題は、巡り巡って児童労働問題にもつながっている。家が貧しいと、子供たちは学校を休んで家業を手伝わざるを得なくなる。サプライチェーンの改善は、教育問題の解消をも促すことをここで確認しておく必要がある。

そのうえで、Kitaはまだシードラウンドを終えた段階である点にも注目するべきだろう。今後シリーズA、シリーズBと進んでいく中で、ますます事業を拡大していくはずだ。フィリピンのアグリテック分野は、それまでの遅れを取り戻すだけでなく世界最先端の仕組みを構築している。今後のグローバルな躍進にも期待したい。

引用元:Kita

(文・澤田 真一)