GKソンの退場で苦境に
迎えた後半3分、加藤が湘南最終ラインの背後へパスを送り、これに広島FW大橋祐紀が反応。湘南MF鈴木雄斗(センターバック)のスライディングが届かなかったうえ、GKソン・ボムグンも捕球できず。ソンと大橋がペナルティエリア内で交錯したことで、広島にPKが与えられた。
大橋を倒したソンのプレーが決定的な得点機会の阻止と見なされ、同選手にはレッドカードが提示される。昨年まで湘南に在籍した大橋にこのPKを物にされ、アウェイチームは1点ビハインドのうえ10人という苦境に陥った。
退場者を出した湘南は、[4-4-1]の布陣で反撃を試みる。後半42分、GK馬渡洋樹のロングパスを敵陣右サイドで受けたルキアンが、そのままペナルティエリア右隅へ侵入。ここから強烈なシュートを放ったが、広島GK大迫の好セーブに阻まれた。
同43分には、途中出場の湘南FW石井久継が左サイドからのドリブルでシュートを放つも、これは惜しくもクロスバーの上を通過。湘南の未来を担うであろう18歳FWが自軍に活力をもたらしたが、同点ゴールには至らなかった。
湘南は後半アディショナルタイムに浴びた速攻から大橋にゴールを奪われ、万事休す。今季リーグ戦無敗の広島相手に勝ち点を挙げるには、詰めが甘かった。
広島戦で採用したかった[4-4-2]
これは筆者の見解となるが、湘南はこの試合で[4-4-2]の布陣を敷いたほうが、広島MF川村拓夢や満田、松本、加藤の4人を捕捉しやすかったかもしれない。相手3バックのうちボールサイドの2名を湘南の2トップが捕捉し、相手チームのパスワークを片方のサイドへ誘導。湘南の中盤4人が川村、満田、松本、加藤をマンツーマンで捕まえたうえで、湘南のサイドバックが相手ウイングバックに寄せれば、追い込み漁に近いハイプレスが成立する。湘南は今季から[4-4-2]にトライしていただけに、この布陣でのハイプレスを広島戦で見たかった。
C大阪戦でも窺えた湘南の守備の甘さ
守備の設計が甘く、相手GKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)を止めきれない。この湘南の問題点は第5節セレッソ大阪戦(0-2で敗北)でも窺えた。
この試合の前半21分、基本布陣[4-1-2-3]のC大阪はDF登里享平(左サイドバック)がタッチライン際から内側へ立ち位置を移し、[3-2-4-1]に近い配置でビルドアップ開始。これに対し基本布陣[4-4-2]の湘南2トップがC大阪MF田中駿汰(中盤の底)へのパスコースを塞ぎ、中央封鎖を試みたが、登里をマークする選手がいなかったためここへパスが繋がってしまう。直後の登里のパスが繋がらず事なきを得たが、ピンチに直結してもおかしくない場面だった。
ここでも湘南が[4-4-2]の布陣を基調とする前述の守備をしていれば、こうした事態は防げたはず。守備の設計、具体的に言えばハイプレスの段取りの見直しは急務であり、これができなければJ1残留は覚束ないだろう。