特定のグループへの差別や偏見を助長する表現を避け、社会的・政治的に中立かつ公正な表現を使用する「ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)」。近年、企業が活動を行う上で押さえておきたい重要な事項です。

本記事では、そんな「ポリコレ」について基礎知識を解説。ポリコレの重要度が高まっている背景や、ポリコレの具体例もご紹介しています。


本記事の内容をざっくり説明



  • ポリコレの重要性が高まっている理由とは?

  • ポリコレの具体例をご紹介

  • ポリコレを推進する際の課題とその解決方法は?



ポリコレの意味

「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」の略語である「ポリコレ」。直訳で「政治的正しさ」や「政治的妥当性」を意味する言葉です。ポリコレは、差別的な表現を避け、社会的・政治的に中立かつ公正な表現を使用することを指します

例えば、医療の分野で「保健婦助産婦看護婦法」の一部改正により、資格名称が変更されたことはポリコレの代表例として知られています。その改正では、女性は看護婦、男性は看護士と呼ばれていたのが「看護師」に、女性は保健婦、男性は保健士と呼ばれていたのが「保健師」に名称が統一されました。

性別や人種など属性によって呼称を分けることが偏見に繋がることを懸念して、中立的な表現に改める動きを総称して、ポリコレと呼ばれています。

参照元:厚生労働省「保健師助産師看護師法等の主な改正経緯」

ポリコレが始まったのはいつから?

ポリコレという言葉は、1960年代に新左翼が使うようになったのが始まりと言われています。その後、1990年代のアメリカで社会的・政治的に批判対象を批判する意味で使われるようになりました。

今では、政治的正しさや政治的妥当性を説明するようなシーンに留まらず、ジェンダーや民族、人種など特定のグループへの偏見や差別を助長することを防ぐ目的で、世界各国で使われています。

参照元:計画議論適正化のための ポリティカル・コレクトネス(PC)意識

ポリコレの重要性が高まっている理由

近年、ポリコレに注目が集まっているのはなぜなのでしょうか。ポリコレの重要性が高まっている理由を解説します。

多様性を尊重する社会への変容

近年、世界的に多様性を尊重する意識が高まっています。異なるバックグラウンドを持つ人々が集まる多様性のある社会では、イノベーションや新しい発想が生まれやすいとされています。

ポリコレは、人種・性別・国籍・宗教・年齢など、多様な価値観や思考を有する人材を差別・排除する動きを防止することに繋がるため、注目されています。

雇用の拡大(ダイバーシティ経営)

雇用の拡大が推進されていることも、ポリコレの重要性が高まっている理由のひとつです。

雇用の拡大、つまりダイバーシティ経営とは、性別や年齢など属性の多様性だけでなく、キャリアや経験など働き方の多様性も含めて、個々の持つ能力を発揮できる環境を作り、自社の競争力強化に繋げる経営のことです。日本では経済産業省が推進しており、多くの企業がダイバーシティ経営を取り入れています。

ポリコレのひとつに、求人広告での表現があります。年齢や性別などによって条件や取り扱いに違いを作らないよう意識することで、雇用の拡大が期待できます。

関連記事:ダイバーシティの意味とは?インクルージョンとの違いや種類などを紹介

企業価値の向上

市場の成熟により、企業の競合優位性に大きな差が見られなくなってきています。そうした中で企業が今後も長く事業を続けていくためには、企業そのものの価値の向上が必要です。特に近年は、一般消費者が企業の言動を注意深く観察しており、ちょっとした失言はSNSを通じてすぐに拡散されてしまいます。

ポリコレにより、一貫して中立かつ公正な表現や活動を行っている企業は、それだけで一般消費者から信頼性の高い企業として認識され、企業価値を向上できます。