パレスチナ自治区ガザを2007年以来実効支配しているイスラム過激テロ組織「ハマス」は昨年10月7日、イスラエル領土に侵入し、開催中の音楽祭にいたイスラエル人を片っ端から射殺し、近くのキブツ(集団農場)を襲撃しておよそ1200人のユダヤ人を殺害した。
通称「10・7奇襲テロ事件」は今月7日で半年が経過した。懸念されていたことだが、イスラエル軍とハマス間の戦闘は長期化し、人質は依然解放されず、停戦の見通しは不透明だ。ここにきてイラン、レバノンなど近隣諸国を巻き込む大戦へとエスカレートする気配が出てきた。
イスラエルのネタニヤフ首相はハマスのテロ直後、「ハマスの壊滅」と「人質の全員解放」を目標に掲げ、ガザ地区に向けて軍事攻撃を開始した。パレスチナ側の保健当局によると、これまで3万3000人以上のパレスチナ人、主に民間人がイスラエル軍の軍事攻勢の犠牲となった。米国を含む国際社会はイスラエル側に停戦を呼び掛けてきたが、カタール政府やエジプト当局の調停にもかかわらず、イスラエル側とハマス間の停戦交渉は合意に至っていない。なお、イスラエル首相府は5日未明、米国から強く要請されてきたパレスチナ自治区ガザの人道状況の改善のため、エレズ検問所を一時的に開放する緊急措置を決定したばかりだ。
イスラエル軍がハマスの拠点、ガザ最南部ラファに軍事攻勢を準備している中、4月1日、ガザ地区で人道支援中の国際NGO「ワールド・セントラル・キッチン」(WCK)のメンバー7人がイスラエル軍の空爆の犠牲となるという惨事が発生し、国際社会のイスラエル批判は一層高まってきた。国連は「ガザ地区の人道状況は危機的だ」と警告。イスラエル側は軍の誤爆を認め、軍の関係者を処罰するなど事態の鎮静化に乗り出した。
ただし、事態は急変してきた。イスラエル空軍は1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館を空爆し、そこにいた「イラン革命防衛隊」(IRG)の准将2人と隊員5人を殺害した。これを受け、イラン最高指導者ハメネイ師は2日、イスラエルに対して報復を表明、軍は厳戒体制を敷いている。