当方は欧州で数回、40度以上の気温を体験した。チェコの首都プラハで40度以上を体験した時、ムーンとした熱風が頬を包む。風景がボーと沸騰しているように感じたことを思い出す。2018年の8月はウィーンでも40度を超えた(「『地球』に何が起きているのか」2018年8月8日参考)。

「2022年地軸大変動」(松本徹三著)というSFを読んだことがある。地軸の大変動で熱帯地域から極寒帯地になるアフリカ大陸の人々を救うために世界の指導者たちは英知を結集。地軸の変動が開始する前にアフリカ国民を安全な地域に移住させようと史上最大規模の移住計画が立てられる。アフリカは多くの犠牲を払いながらも、アフリカ連邦共和国として存続していくという話だ。ハッピーエンドだが、非常に啓蒙的な話だ(「『2022年地軸大変動』を読んで」2021年11月7日参考)。

東日本大震災(2011年3月11日)では地球の地軸が僅かだが動いたと聞いたことがある。地球温暖化は久しく警告されてきた。地球温暖化には人類の責任が問われるかもしれないが、地軸変動は人類の責任というより、惑星地球の運命と受け取るべきかもしれない。

参考までに、米航空宇宙局(NASA)は2021年11月24日、地球に接近する小惑星の軌道を変更させることを目的とした「DART」と呼ばれるミッションをスタートさせた。未来の地球の安全を守るためにNASAと欧州宇宙機関(ESA)が結束して「地球防衛システム」を構築するためのビッグプロジェクトだ。DART計画は、宇宙探査機(プローブ)を打ち上げ、目的の小惑星に衝突させ、小惑星の軌道の変動を観察する実験だった。NASAの管理者、ビル・ネルソン氏は2022年10月11日、小惑星衛星ディモルフォスの軌道が9月のDART探査機の衝突の結果、その軌道に影響があったと語ったのだ。ディモルフォスがディディモスを周回するのにこれまで11時間55分かかっていたが、現在は11時間23分だ。人類は惑星の運命すら変えようとしているのだろうか(「天体の動きを変えた人類初の試み」2022年10月13日参考)。

当方は「4月の夏」を迎えたアルプスの小国オーストリアの気象の変動から人類の終末、黙示論的な世界を描く意図は全くないことを断っておく。名探偵シャーロック・ホームズが友人ワトソン博士に「君は僕と同じように見ているが、僕のようにそれを観ていない」と語る場面がある。当方は努力して少しでも観ていきたいのだ。

4月に30度の気温を体験することは気象学的には少なくとも正常ではない。めったにないことだから、「4月の夏」をエンジョンすればいいだろう、という意見もある。長い地球の歴史には過去、同じようなことがあった。驚くことはない、と楽観視することも可能だろう。

ところで、イエスは「いちじくの木から譬を学びなさい。その枝が柔らかになり葉が出てくると、夏が近いことが分かる」(「マルコによる福音書」第13章)と述べ、時の徴(しるし)を見逃してはならないと警告を発している。当方は「4月の夏」の訪れに一種の緊張感と戸惑いを感じている。

sbayram/iStock

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年4月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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