最も古い「樹木の化石」を更新!ヤシのような見た目で内部が空洞だった!?

「最古の森林」の記録として、これまで最も古かったものは、アメリカ・ニューヨーク州カイロの廃棄された採石場で見つかった化石でした。

ここでは、10mまで成長するような「Cladoxylopsids(クラドキシロプシダ)」と、古代の松のような木「Archaeopteris(アーキオプテリス)」の化石が発見されており、3億8500万年前のものだと推定されました。

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そのため今回イングランド(デボン州とサマセット州)の海岸で見つかった3億9000万年前の「Calamophyton(カラモフィトン)」の化石は、以前の記録を約500万年更新したことになります。

研究チームの一員であるクリストファー・ベリー氏(カーディフ大学)は、「Calamophytonの木は、イギリスでこれまでに発見された最も古い樹木の化石であり、植生の歴史の欠けた部分を明らかにします」と述べています。

では、現状最も古い樹木の化石である「Calamophyton」は、どのような植物なのでしょうか。

Calamophytonのイメージ。
Calamophytonのイメージ。 / Credit:Peter Giesen/Chris Berry_Earth’s earliest forest revealed in Somerset fossils(2024 EurekAlert)

研究チームによると、「この樹木は一見するとヤシの木に似ている」ようですが、私たちがよく知っている今日の木々とは異なり、いわば「原型」のような存在です。

Calamophytonの木は、幹が細く、内部が空洞になっていました。

また枝に葉は無く、その代わり、多くの小枝のような構造物で覆われていたようです。

現在の木々と比べてはるかに低く、高さは2~4mほどでした。

そして木が成長するにつれて大量の枝を落とし、それらが無脊椎動物たちの生息を支えたと考えられています。

Calamophytonの化石
Calamophytonの化石 / Credit:Neil Davies_Earth’s earliest forest revealed in Somerset fossils(2024 EurekAlert)

加えて研究チームは、この化石や、化石が発見された地層から、木々が生きていたころの環境をいくらか知ることもできました。

ベリー氏は、「Calamophytonが、小さな川の脇にできた盛り上がった土手に沿って立っていた」と推測しています。

さらにデイビス氏は、今回のイングランドの「最古の森林」では1種類の木がまばらにしか生えていないことと、400万年後のニューヨーク州の「最古の森林」ではより多様な種が存在していることを比較し、次のように述べています。

「サマセット州とデボン州の植物相とニューヨーク州の植物相を比較すると、地質時代の観点で、物事が急速に変化したことがよく分かります。」

デボン紀にできた森林は、私たちの想像以上に、急速に拡大していったのかもしれませんね。

サマセット州とデボン州の海岸にある砂岩層
サマセット州とデボン州の海岸にある砂岩層 / Credit:Neil Davies(University of Cambridge)_Earth’s earliest forest revealed in Somerset fossils(2024)

ちなみにデイビス氏によると、「今回の発見は偶然だった」ようです。

研究チームは別の目的で地質を調査するためにこの地域を訪れており、野原で昼食をとっていた時に、偶然この化石を見つけたのです。

これまで科学者たちは、「イングランドの海岸のこの地域には、重要な植物の化石は含まれていない」と考えていたため、デイビス氏らにとってもこの発見は驚くべきものでした。

もちろん、最古の森林については、未だ分からないことばかりです。

今後もこのような調査や発見を重ねることで、どのように森林が生まれ拡大していったのか分かる時が来るでしょう。

参考文献

Earth’s earliest forest revealed in Somerset fossils(Cardiff University)

Earth’s earliest forest revealed in Somerset fossils(University of Cambridge)

Earth’s earliest forest revealed in Somerset fossils(eurekalert)

元論文

Earth’s earliest forest: fossilized trees and vegetation-induced sedimentary structures from the Middle Devonian (Eifelian) Hangman Sandstone Formation, Somerset and Devon, SW England

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。