日本の企業におけるLGBTQ+当事者への取り組みは、まだ完全に浸透しているとはいえません。実施率は大企業では約4割(39.0%)に対し、中小企業では約2割以下(18.0%)となっています。
トランスジェンダーの従業員に向けた配慮や制度がある企業はわずか2割程度であり、特に中小企業では取り組みが少ない傾向です(※1)。LGBTQ+の就活生やビジネスパーソンが自分らしく働くため、企業に求められることとは何でしょうか。
前編では、ダイバーシティ求人サイト「JobRainbow」を運営する株式会社JobRainbow 執行役員CSO(最高戦略責任者)・ダイバーシティ採用事業部 ゼネラルマネージャーの海老根さん、ダイバーシティ採用事業部の大朋(仮名)さんにLGBTQ+の就労における現状を伺いました。
そして今回は、企業側・非当事者の視点に立って、周りができるアクションについて話してもらいます。
(※1)出典:Indeed「企業のLGBTQ+当事者の従業員への取り組みに関する調査」
企業に不可欠な「D&I」の視点
ーーーどのような企業が求人サイト「JobRainbow」を利用しているのでしょうか?
海老根:企業の取り組み状況に関してはさまざまですが、先進的な取り組みをされている企業様、女性活躍推進から力を入れ始めた企業様など、従業員と誠実に向き合いたいという思いをもたれている印象です。
大朋:打ち合わせをするなかでも、一緒に働く仲間に対して想いをしっかりともっていらっしゃる企業様が多いと感じます。当事者からしても、制度が完璧に整っている企業よりも、1人ひとりのことを真剣に考えてくれている企業の下で働きたいという思いがあるように感じています。
ーーーJobRainbowが創業した2016年から今までの約8年間、LGBTQ+に関する企業の取り組みや意識に変化はみられましたか?
海老根:以前からD&IやLGBTQ+に関する取り組みへの関心度は高まっていますが、特に2023年あたりから企業が積極的に取り組みをしなければならないといった雰囲気が感じられます。
ーーーここ1年で関心をもつ企業が増えた背景は何だと考えられますか?
海老根:人手不足がいよいよ深刻になってきたという側面が大きいと考えています。
2023年から労働需給バランスがマイナスに転じているといった報告がされ、働きたい人が仕事に就いたとしても人手不足が解消されないという危機的状況下に置かれているのがここ1年の状況なのかなと(※2)。
(※2)出典:リクルートワークス研究所「Works Review2023」
ーーー人手不足解消の側面からも、労働環境に大きな変化が見られるようになりましたね。
海老根:国も移民を積極的に受け入れたり、雇用に対する法整備を進めていたりしています。法整備に関しては、育児・介護休業法、女性活躍推進法、障害者差別解消法の改正やパワハラ防止対策の義務化などが進んでいる状況です。
企業が優秀な人材を自社にとどめ、かつ採用するためにも、D&Iの重要性は不可逆的に高まっています。実際に、2023年には企業様からのお問い合わせが3倍に増えました。