※本記事は、2015年の記事の再掲です。

 米国中央情報局(CIA)による国際テロ組織「アルカイダ」メンバーへの拷問について、世界中で拷問や残虐な現場を見てきた危機管理コンサルタントのA氏は「このくらいの内容なら、世界的にみれば人道的な拷問ですよ」と話す。

 確かに、これまで紹介してきた世界各地で行われている残虐な拷問や処刑方法に比べれば、CIAの拷問は残虐性では劣る気もするが……。

「CIAにとって拷問は、情報収集のいち手段でしかありません。彼らは憎しみにかられて拷問しているのではなく、カネや海外での生活を与えるなどの懐柔策にもなびかない、黙秘や偽情報の提供を続ける“悪質な容疑者”に限って拷問しているんですから」(A氏)

 そんなCIAが行う拷問について、いくつかの映画でとてもリアルに紹介されているものがあるという。今回は、そんな“CIAの拷問映画”について紹介しよう。

■『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012年公開)

 CIAがアルカイダの指導者であるウサーマ・ビン・ラディンを追い詰めて襲撃するまでを、関係者の証言をもとに描いた作品だ。

「冒頭から描かれているとおり、水責めは、CIAにとってはオーソドックスな拷問方法です。料理でいえば前菜レベルのもの。その後、水責めと殴打を繰り返し、それでも口を割らない場合は、容疑者を女性の前で素っ裸にして、四つん這いにさせて引きずり回します。作中ではこれを『犬の散歩』なんて表現してましたね……。こうして恥をかかせた上で、引越し用のダンボールほどの木箱に押し込み、放置するんです。実は。これがとにかくつらい。まったく身動きが取れないため、体中の関節がミシミシと痛み、さらには暗闇の中で時間と平衡感覚を喪失して絶望に襲われます。この辺がメインディッシュでしょうか。作品中、96時間もの間睡眠を奪われた容疑者は、ほかのメンバーの名前を無意識に口にしますが、実際、容疑者自身は口を割った記憶すら残らないと言います」(A氏)

 CIAの場合、こうした拷問をパッケージ化しているのだという。その高度な誘導によって、たいてい1週間程度で口を割らせることが可能なのだそうだ。

「拷問でもうひとつ大事なのは、容疑者に尋問官との上下関係を認識させ、反抗心を奪うことです。言うことを聞かなければ死ぬよりもつらい拷問が永遠に続くのだと、“絶望”させるんですよ。そのため尋問官は、拷問する一方で、時には優しく食事や飲み物を与えて、容疑者が“絶望”の中で“口を割れば楽になれる”という意識を持つよう、誘導していきます。そうして、恐怖や苦痛への耐性がつかないように拷問のレベルを徐々に上げていき、言葉巧みに情報を引き出すのがCIA拷問術です」(A氏)