田中マルクス闘莉王氏 写真:Getty Images

 今月開催の北中米W杯アジア2次予選で北朝鮮代表と対戦するサッカー日本代表「森保ジャパン」。13年ぶりとなる平壌開催の地上波放送・インターネット配信がないとみられる中、日本代表OBの田中マルクス闘莉王氏が日本サッカー協会(JFA)の対応を疑問視。平壌開催の日本戦の地上波放送を強く求めたが、北朝鮮が拉致・核・ミサイル問題を抱えているだけに、闘莉王氏の意見に対する批判が見られる。

 平壌開催の日本戦に関しては、日本政府や国連が北朝鮮に経済制裁を科していることを理由に、JFAが北朝鮮側に放映権料を支払わない模様。JFAの山本昌邦ナショナルチームダイレクターは、今月14日の代表メンバー発表会見で「関係者が努力していることは承知しているが、放送が難しい状況とは伺っています」と述べていた。

 今月18日の参議院予算委員会でも議題に挙がるなど、平壌開催が話題を呼ぶ中、闘莉王氏は19日夜に自身の公式YouTubeチャンネル『闘莉王TV』を更新。「必ず日本代表戦は地上波で放送されるべき!アウェー北朝鮮戦テレビ放送なし危機の森保J…サッカー人気復活に闘莉王提言!」という見出しのもと、平壌開催の日本戦が放送されない可能性について、以下のようなコメントを残している。

 「サッカーを通じて皆に少しでも喜ばしい時間を与えられたら良いのに、そういったこと(北朝鮮への制裁)で完全にストップされて…スポーツはそういう部分に邪魔されているのかなという感じがする。純粋に考えると、サッカー見て喜びたいだけの話なのに、そういう部分があると少し悲しい」

 くわえて同氏は「日本代表戦は必ず地上波放送をしないといけないというルールを作るぐらいやった方がいい」と持論を展開。「(放映権を巡る問題で)JFAはもう少し戦わないといけない」と、苦言も飛び出した。

 ただ、YouTubeのコメント欄では「北朝鮮に関してはまた別の問題ですよね」「北朝鮮でのアウェー戦に限って言えば、国連の制裁決議に従ってあらゆる取引が出来ないため、JFAどうこうの問題ではない」「JFAは報道機関ではなく、一スポーツ団体だから、JFAの頑張りが足りないとかそういうレベルではない」「北朝鮮には金を払ってはいけない」といった声が湧き起こっている。

 またサムネイルで「アウェイ北朝鮮戦、テレビ放送なし。JFAは闘って欲しい」と記されているだけに、一部からは「今回はサムネに悪意がありませんか?」という声も。地上波放送がなかったW杯アジア2次予選のシリア戦やアジアカップの一部試合とは事情が異なるだけに、闘莉王氏の主張がミスリードを引き起こすといった指摘もある。

 なお、テレビ朝日系『報道ステーション』の元MCであるフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏は、平壌開催の北朝鮮戦に関連して「北朝鮮はスポーツイベントを機に、アメリカ、日本、韓国の連携を分断して、相手にしてくれそうな拉致の問題をはんでいる日本にすり寄っている。よく政治をスポーツに持ち込むなというようなこと言いますけど、政治はスポーツを徹底利用してきた歴史がある」と、北朝鮮政府による政治利用を警戒。闘莉王氏の「スポーツはそういう部分に邪魔されている」というコメントとは対照的な見解を示している。