茶色パンダの毛色が茶色になる原因遺伝子を特定
今回の研究では、茶色パンダであるチーザイの遺伝子を解析し、通常のジャイアントパンダ29頭の遺伝情報(ゲノム)と比較しました。
その結果、「BACE2」と呼ばれる遺伝子の変異が、黒色ではなく茶色の模様を生み出す可能性が高いと判明しました。

研究チームによると、このBACE2変異は、メラニン色素を含む細胞小器官「メラノソーム」の量を減少させるようです。
このメラノソームは、被毛や皮膚の色素に影響を与えているため、これが減少することで、黒色から茶色へと、色が薄くなったものと考えられます。
実際研究チームは、茶色パンダのメラノソームが、通常のパンダのメラノソームよりも小さく、数が少ないことを発見しました。
BACE2変異が原因であることを確かめるため、研究チームは、さらに192頭の通常のジャイアントパンダのゲノムを調べました。
その結果、BACE2変異を持つ「通常の色のジャイアントパンダ」は1頭も存在しませんでした。
さらにチームは、最終確認として数匹のマウスの遺伝子を編集し、BACE2変異を持たせました。

その結果、それらすべての遺伝子編集マウスの毛色が明るくなりました。
これらの結果から、やはり茶色パンダの明るい毛色の原因は、BACE2遺伝子の変異だと考えられます。
ちなみに、このBACE2遺伝子はアルツハイマー病との関連が知られていますが、研究チームは、「この変異が茶色パンダに及ぼす他の生理学的影響は不明のままです」とコメントしています。
それでもBACE2変異マウスにおいては、「生存能力と生殖力があり、目立った身体的異常はない」とのこと。
非常に貴重で世界中から愛されている「茶色パンダ」だからこそ、彼らのことをより深く理解し、これからも健康でいてもらいたいものです。
参考文献
Scientists Find Genetic Basis Making Some Pandas Brown
Scientists decode genetic enigma of brown-coated giant pandas
Not all black and white: How brown pandas got their unique coats
元論文
Taking a color photo: A homozygous 25-bp deletion in Bace2 may cause brown-and-white coat color in giant pandas
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。