コンチネンタルタイヤが、フラッグシップタイヤである「スポーツコンタクト」を、最新の第7世代「スポーツ・コンタクト 7」へとフルモデルチェンジ。その乗り味を確かめるべく、高速道路からワインディングロード、そして街中と沢山の路面で走り比べてみた。
文:山田 弘樹 / 写真:土屋 勇人 / 編集:CarMe編集部
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試乗車は、レクサス「IS500 F SPORT Performance」。そのフロントコンパートメントには、481PS/535Nmを発揮する自然吸気の5.0リッター、V型8気筒エンジンを搭載し、8速ATを介して後輪を駆動させるハイパワーセダンだ。
とはいえその乗り味はレクサスの名に恥じないしなやかさを持っており、多くのエンスージアストたちがその乗り味を絶賛するモデルでもある。
よってスポーツ・コンタクト 7(以下SC7)の性能を推し量るには、申し分ないカップリングと言えるだろう。
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目指すは、箱根ターンパイク。そして試乗はまず、一般道から始まった。まずここで感心させられたのは、SC7のコンフォート性能だ。
既に暖気を終えていたIS500のエンジン音が、静まりかえった街中でも常用域において非常に静かであったとこにも驚いたが、SC7の乗り味も、そこにぴたりと歩調を合わせていたのである。
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具体的には、まず初手から乗り味がいい。空はまだ黒く、気温も10度を下回る状況だったが、走り出しからコンパウンドが冷えた路面を着実に捉えていた。ハイグリップラジアルは高温に強いが、こうした路面では背反してウォームアップが必要な場合も多い。
かつアクセルを離すと、スーッと車体を快適に転がして行く。その差に、かなり驚かされた。ちなみにその転がり抵抗値は、主要サイズでEUラベルの「C」(日本基準にして「A」相当)を獲得しているのだという。
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またフロント235/リア265mmという幅広いトレッドにもかかわらず、ロードノイズが低く抑えられているのも見事だった(静粛性レベルは71dB)。
交差点ではフェザータッチのブレーキでも減速Gをじわりと立ち上げ、舵を切ればスムーズに縦Gを横方向へと移動させる。段差を乗り越えてもバネ下の収まりが良く、うねりでも小刻みに横揺れするようなことがない。
個人的な印象になるが、先代よりもタイヤが軽くなった気がする。
UUHP(ウルトラ・ウルトラ・ハイパフォーマンス)タイヤという先入観が簡単に裏切られるほど、タウンスピードでのマナーは紳士的。それでいて車体を、どっしりと支えてくれる安心感がある。
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街中からバイパスへとアクセスし、東名高速道路へ。ここでもSC7は、街中のマナーの良さをそのままに、新たな顔を見せてくれた。
100km/hレベルの巡航では、その性能に疑問を感じる余地は全くない。直進安定性は高く、ハンドルを軽く保持した状態で、IS500は悠然とクルージングしてくれる。
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見所のひとつはレーンチェンジで、操舵に対してCP(コーナリングパワー)の立ち上がりがとても滑かなのが素晴らしかった。IS500が、身軽さを得た感じだ。
ハイグリップタイヤというとハンドルを切った途端にパキッとグリップを立ち上げるイメージだが、SC7はここがとてもリニアだ。
反発感もなければ必要以上のたわみ感もなく、ハンドルを切った通りに車線が変更できて、変更後はヨーモーメントがピタッと収まる。
文字に起こせば仰々しいが、その身のこなしはとてもスマートで大人っぽい。
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こうした操舵に対する応答性の素直さは、アウト側のブロックを大きく取った、左右非対称の「アダプティブ・パターン」が効いている。
またCPの立ち上がり方が最適なのは、「テーラーメイド・コンストラクション」によって、車種毎の特性に合わせた構造が採用されているからだ。
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ちなみに筆者は最初、この極めて上質な操舵フィールの多くを、コンパウンドの柔らかさによって得ていると思っていた。
しかし、コンチネンタルタイヤの製品担当者によれば、SC7のコンパウンドは、高温高負荷領域でのロバスト性や、耐摩耗性を考えて、かなり高剛性なのだという。
それでも路面をゴムがしなやかに捉えられるのは、まず「ハーモナイズド・ブラックチリ」コンパウンドの特性がひとつ。
そしてSC7のケーシング剛性が、IS500にマッチングできているからなのだという。
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もちろんコンチネンタルは、IS500専用にタイヤを開発はしていない。
しかし19インチのスポーティタイヤを履く車両を想定するとそれは、前後重量配分が均等に近い大排気量セダンやハイパワーSUVになる。だからそのケーシングに対しては、前後の荷重バランスが良く、さらにハイパワー&トルクな車両を想定している。
これがたとえば18インチ以下のクルマになると、FWDもしくはFWDベースの4WDが多くなるため、フロント荷重が大きめなクルマを想定したケーシング構造となる、といった具合だ。
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最後は、ワインディングロードを走らせた。SC7のパフォーマンスが、一番素直に発揮されるステージだ。
だが面白かったのは、その印象がほぼ、街中や高速クルージングと変わらなかったことだった。
もちろん車速が上がり、荷重がタイヤに掛かれば掛かるほど、そのグリップレベルは上がって行く。
手の平に伝わる接地感は明瞭さを増し、ロールに対する踏ん張り感が高まって頼もしさが発揮されて行く。
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しかしCPの立ち上がりは依然としてリニアであり、速度に応じて適切なコーナリングフォース(CF)やブレーキングGが発揮されるのだ。
だからドライバーのレベルに関係なく正確なブレーキ操作を行うことができ、それを心地良く旋回Gへと移して行ける。そしてスムーズに、パワーを掛けて行くことができる。
その徹頭徹尾軽やかでリニアなグリップ感は、乗り手に必要以上の緊張感を与えず、素直に運転を楽しませてくれる。
このタイヤを履けばクルマの特性が理解しやすくなるし、運転がうまくなれると思う。
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ワインディングレベルでSC7の底が見えないのは、まだまだそのグリップキャパシティに余裕があるからだろう。
カーカスの折り返し角度を20度ずらしてサイド剛性を高めた「X-プライ」の真価や、これに相対するサイドウォールの放熱性の高さ、ブロックのよじれを底支えする「インターロック」の効果を体感するには、サーキットレベルの負荷とスリップアングルが必要だと感じた。
きっとサーキットでの運転も、楽しいはずだ。その機会が得られたら、またじっくりインプレッションしてみたい。
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SC7は、どんなシチュエーションでもそのポテンシャルを持て余さない。
どの速度域においても穏やかで安心感が高く、スポーティな走りが得られるキャラクターを人に例えると、爽やかな今風のアスリートのようだ。
今回唯一残念だったのはウェット性能を試せなかったことだが、性能マトリクスチャートを見ればウェットハンドリング性能は、先代スポーツ・コンタクト 6に対して5%向上しているという。
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イン側にソフトコンパウンドを用い、高剛性アウトブロックには直進時の接地面の境目に最大となる排水パターンを配置する設計と、ドライ時の接地性の良さから考えても、その期待度は大きい。
ちなみにウェットブレーキ値はハイグリップラジアルにもかかわらずEUラベルで「A」(日本の基準としては「a」相当)を獲得している。
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また各種性能においても全てのチャートで先代を上回っているが、特に向上しているのが「サーキット性能」(110%)と、「耐摩耗性能」(117%)であるところが実に興味深い。走りを高めても減りにくいというのは、極めて現代的だと思う。
総じてスポーツ・コンタクト 7は、これからの時代を走るためのウルトラ・ウルトラ・ハイパフォーマンスタイヤだと感じた。ただマッチョなだけでは、だめなのだ。
タイヤはその形と同じで、全方位的な性能バランスを持つ「丸さ」が何より重要なのである。
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