ホンダが新型燃料電池車の「CR-V e:FCEV」を日本と米国で発表。パワートレインにはGMと共同開発した、外部から充電可能なプラグイン機能を持つ新開発の“水素×電気”FCシステムを搭載。EV走行可能距離は60km以上、水素を使用しながらの一充填・充電走行距離は600km以上を想定
ホンダは2024年2月28日、新型燃料電池車の「CR-V e:FCEV」を東京ビッグサイトにて開催された「H2&FC EXPO[春]2024~第21回[国際]水素・燃料電池展[春]~」で世界初公開。また、米国ホンダも同年2月27日(現地時間)に同モデルの概要を公表した。
ホンダ車としては2021年に生産を終了したクラリティ フューエルセル以来の量産燃料電池車となるCR-V e:FCEVは、北米や中国市場などで販売している第6世代のCR-VをベースとしたSUVタイプのFCEVで、グランドコンセプトには「E-Life Generator」を掲げる。具体的には、約3分の水素充填時間によるストレスフリーな長距離ドライブと、日常走行でEVのような使い勝手を提供するプラグイン充電機能にSUVの走破性・機能性をあわせ持つ、身近に使える燃料電池車として開発。また、外部給電器による高出力な電力供給に加え、普通充電ポートに接続する給電専用コネクターにより気軽に電気を取り出すことができ、日常やレジャー、停電時など、あらゆる場面での利便性・安心を提供する新進のSUVに仕立てている。
肝心のパワートレインは、燃料電池システムとエアポンプ、モーターおよびギアボックスを一体化したパワーユニットをフロントセクションに、大容量の駆動用バッテリーを床下に、水素タンクをリアアクスル手前と上部に搭載して、前輪を駆動する。核となる燃料電池システムはホンダと米国ゼネラルモーターズ(GM)が共同開発した新ユニットで、従来のクラリティ フューエルセル用に比べて白金使用量の削減やセル数の削減、量産効果などでコストを3分の1にするとともに耐久性を2倍に引き上げ、さらに耐低温性も大幅に向上させる。また、燃料電池システムを中心としたパワーユニットを一体化することで小型軽量化を実現。既存のCR-Vのエンジンマウントをそのまま活かしてコストを低減し、かつ衝突安全性や耐振動および騒音をより高めたことも特徴である。推定電力出力は92.2kW、モーター出力は174hp/310Nmと公表。生産については、ホンダとGMの合弁会社で米国ミシガン州に居を構えるFuel Cell System Manufacturing,LLCで行う計画だ。
駆動用バッテリーのIPUに関しては、クラリティ フューエルセル用の(1.47kWh)とほぼ同サイズながら、容量を17.7kWhへとアップ。また、2つのユニットで構成する水素タンクは前述の通りおよそ3分で満充填となる。さらに、外部からIPUに直接充電できるプラグイン機能を装備。AC充給電コネクターは日本と米国における普通充電の規格である「SAE J1772」に準拠し、家庭のACコンセントに接続して気軽に車両の充電を行うことができる。性能面では、EV走行可能距離が60km以上、水素を使用しながらの一充填・充電走行距離が600km以上を見込んでいる。一方、走行モードとしてはバッテリーの電気のみを利用して走る「EV」、FCシステムとバッテリーの電力を最適にマネジメントして走る「AUTO」、バッテリーの残量を維持しながら走る「SAVE」、バッテリーを充電しながら走る「CHARGE」の4種類を設定。切り替えはセンターコンソール部に配したスイッチが担っている。
給電システムに注力したことも、CR-V e:FCEVの訴求点である。普通充電ポートにAC車外給電用コネクター「Honda Power Supply Connector(パワーサプライコネクター)」を接続することで、最大1500WのAC給電が可能。また、日本仕様には荷室内に設置したCHAdeMO方式のDC給電コネクターに「Power Exporter e:6000(パワーエクスポーターイー)」、「Power Exporter 9000」などの可搬型外部給電機を接続することで、非常時や屋外イベントなどで高出力の電力供給が可能なDC外部給電機能も装備する。
エクステリアに関しては、既存のCR-Vをベースとしたうえで、“クリーン”“タフ”“アイコニック”をキーワードとしたFCEVらしい知的な佇まいと力強さを表現する。フロント部はFCシステムの搭載に即してオーバーハングを110mm延長し、合わせてグリルやバンパー、LEDヘッドランプなどを刷新して、ダイナミックかつ印象的なマスクを創出。一方でサイドビューは、力感あふれる面構成と2700mmのロングホイールベースを踏襲しつつ、足もとに新造形のブラック塗装18インチ10スポークアルミホイールと235/60R18タイヤを組み込む。そしてリアセクションは、新意匠のバンパーやコンビネーションランプ、e:FCEVエンブレムなどを配備した。ボディサイズは全長4805×全幅1865×全高1690mmに設定。ボディカラーはプラチナホワイトパールとメテオロイドグレーメタリックの2色をラインアップしている。
乗車定員5名のインテリアについては、ブラックの内装カラーでシックに仕立てるとともに、緻密なハニカム柄のインストルメントパネルや10.2インチデジタルグラフィックメーター、Honda CONNECTディスプレイ、BOSEプレミアムサウンドシステム、バイオ素材を張ったシートなどを装備。また、水素タンクをリアアクスル手前と上部に分割して配することで、ベース車両と同レベルの広い後席スペースとラゲッジ空間を実現する。ラゲッジ自体には、2段階で床面の高さを調整できるフレキシブルボードを設定した。
先進安全運転支援システムのHonda SENSINGの充実ぶりも見逃せない。高速道路などでの渋滞時にドライバーの運転負担を軽減するトラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)のほか、衝突軽減ブレーキ(CMBS)や誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能、近距離衝突軽減ブレーキ、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)、車線維持支援システム(LKAS)、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能、オートハイビーム、パーキングセンサーシステム、ブラインドスポットインフォメーション、後退出庫サポートなどを標準装備。また、スマートフォンからクルマの状態をチェックできる最新のHonda CONNECTも採用している。
なお、ホンダはCR-V e:FCEVを米国オハイオ州のPerformance Manufacturing Centerで生産して日本に輸入し、本年夏に発売すると予告。また、米国市場では2025年モデルとして本年後半にリリースするとアナウンスしている。
提供元・CAR and DRIVER
【関連記事】
・「新世代日産」e-POWER搭載の代表2モデル。新型ノートとキックス、トータルではどうなのか
・最近よく見かける新型メルセデスGクラス、その本命G350dの気になるパワフルフィール
・コンパクトSUV特集:全長3995mm/小さくて安い。最近、良く見かけるトヨタ・ライズに乗ってみた
・2020年の国内新車販売で10万台以上を達成した7モデルとは何か
・Jeepグランドチェロキー初の3列シート仕様が米国デビュ