気がかりだった攻撃配置の未整備
ロングボール主体だった第1節や2節と比べ、この日の湘南は最終ラインから細かくパスを繋ごうとする場面が多かった。
筆者から見て気がかりだったのは、最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)を安全に行うための配置が整っていなかったことだ。前半9分、基本布陣[3-1-4-2]の湘南はMF鈴木雄斗(右ウイングバック)に高い位置をとらせたうえ、右から大岩、DFキム・ミンテ、DF大野和成、杉岡で一時的に4バックを形成。大野がボールを受けると同時に杉岡が攻め上がったが、両者の距離が開きすぎたためパスが繋がりにくい状態に。センターバック大野とサイドバック化した杉岡の間にMF田中聡が降り、パスの中継役を担うなどの工夫も見られなかった。
これらに加え、ボールを前へ運ぼうとした大野が早いタイミングで自身の体を左(杉岡方面)に向けたため、福岡陣営にパスコースを読まれる展開に。ゆえに湘南のビルドアップは不発に終わった。
リスキーな杉岡の立ち位置
前半12分にも湘南は4バック化しビルドアップを試みたものの、杉岡が自陣後方タッチライン際でボールを受けようとしたため、基本布陣[3-4-2-1]の福岡DF小田逸稀(右ウイングバック)のプレスを浴びてしまっている。杉岡のバックパスを受けたキム・ミンテの縦パスは福岡陣営にカットされかけており、湘南にとって危険な場面だった。
4バック時のサイドバックが自陣後方のタッチライン際、かつ相手チームのサイドハーフ(ウイングFWやウイングバックを含む)の手前でボールを受けた場合、左右どちらかのパスコースが必然的に消え、相手のプレスをもろに受けやすい。湘南の同点ゴールはタッチライン際にいた杉岡の縦パスから生まれたものだが、これはサイド突破を試みた鈴木章斗への奈良の守備対応が淡白だったことに起因すると、筆者は考える。一見すると杉岡のポジショニングが功を奏したように思えるが、これを成功体験とみなし同様の配置でビルドアップを続けるのはリスキーだろう。昨年まで[3-1-4-2]を基本布陣に据えていた湘南の選手たちが、4バックでのビルドアップに慣れるには時間がかかりそうだ。