世界初、デュアルモード4WSを搭載!

バブル期~そのしばらく後までの国産車を象徴するモデル、と言ったときに思い出されるもののひとつに、スタイリング重視の4ドア・ハードトップが挙げられるだろう。しかも、マークⅡやローレルといったハイソカーのそれではなく、それよりひとクラス下の車種として、各社から雨後の筍のように送り出されていた、ファミリーカーではない4ドア車である。その代表車種にして嚆矢であるのが、トヨタのカリーナEDであった。

初代カリーナEDは、1985年、セリカのモデルチェンジに際して、その兄弟車としてデビューした。元々カリーナは、セリカと基本コンポーネンツを共用するファミリーカーとしてデビューしたものだが(だから「足のいいやつ」というキャッチコピーがあった訳である)、ここでは逆に(?)、セリカのスペシャリティカー的性格をそのまま反映させた派生車種として、カリーナEDが登場したのであった。

その特徴は何と言っても、スタイリッシュさを重視したボディで、4ドアでありながら居住性は最初から度外視されていたのであった。それならセリカで良いのではないか、という意見も当然あったわけだが、それまではそうしたスペシャリティカーのオーナーであった男性も、結婚し子供も生まれ……という状況で、4ドアであることが新車購入の必要条件となり、というケースも少なくなかったのである。そこにカリーナEDは見事にはまって、大ヒット車種となったのであった。

ここでの本題である二代目カリーナEDは、1989年9月に登場した。基本的にはキープコンセプトモデルであり、セリカと基本を共用するといった部分も先代同様である。そのため、やはりセリカのモデルチェンジと時を合わせてのデビューとなったのだが、先代との大きな違いは、兄弟車としてコロナEXiV(エクシブ)が登場したことである。これは先代にあったコロナクーペが、4ドアへと形を変えたものでもあった。

スタイリングは先代同様に、水平基調のウェストラインの上に富士山型のキャビンを乗せたもので、車高の低さ(全高1315mm)がセールスポイントであった。オーソドックスなEXiVに比べると、カリーナの方は若干アクが強く、全体に台形フォルムを強調したような造形となっていたが、ユーザーに敬遠されるような種類の個性の強さではないのが、やはりトヨタの巧みなところである。

ボディ形式はクラウンなどとは違いピラーレスハードトップ、レイアウトはFF、サスペンションは前後ともストラット。搭載されるエンジンは3種類あり、いずれも直列4気筒のDOHC 16バルブである。最もスポーティなのが2Lの3S-GE(最高出力165ps)、そして2Lの3S-FE(125ps)と、1.8Lの4S-Fi(105ps)。3S-FEと4S-Fiは、効率を重視した所謂ハイメカツインカムであり、バルブ挟み角の小さいシリンダーヘッドが特徴である。

トランスミッションは全グレードに5速MTと4速ATが設定されたが、2L用が電子制御式4速フルオートマチックであるのに対し、1.8用は2ウェイOD付フルオートマチックとなる。また、二代目カリーナEDでは、デュアルモード4WS(スポーツモードとノーマルモードの切り替えが可能)が採用されていたのも特徴で、スポーツ系グレードには標準装備(レスオプションあり)、ラグジュアリー系グレードではオプション装着可能と、ほぼ全モデルで選ぶことができたが、最廉価モデルのFのみは設定がなかった。

今なおエキサイティング・ドレッシィ…ですか!?「二代目カリーナED」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第38回
(画像=このカタログは折り畳みになっているページが多く、途中で左右を広げてこのように4ページの展開となる見開きがあるほか、末尾の主要諸元のページも折り畳みである。、『CARSMEET WEB』より 引用)

ブルーが印象的だった二代目ED、ただし純正色ではない(多分)…
さて、ここでご覧いただいているのは、そんな二代目カリーナEDの前期型のカタログである。前述の通り、1989年9月にデビューしたこのモデルであるが、カタログには「このカタログの内容は’90年2月現在のものです。」と注記があり、またコード「9002」とあることから、1990年2月発行のものと考えてよいだろう。デビューから約半年後のものだが、この間目立った変更は行われていない。サイズは296×246mm(縦×横)、ページ数は表紙を合わせて全30ページ。

個人的なことを述べると、当時カリーナEDというクルマはあまり好きではなかった。と言っても、「4ドアの本分から外れたこのようなコンセプトは……」というような小難しいことを考えてのことではなく、単純に形の好みの問題である。初代は、全体のシャープな造形の中にあってフロントバンパーのみ妙に柔らかな形をしているのが気に入らず、また二代目も、台形フォルムを強調したところがあまり好印象ではなかった。それよりは、マークⅡ的なスタイリングを控えめに取り入れたEXiVの方が好みだった。

ただひとつ、この二代目EDで印象深いのは、映画『ソナチネ』での登場である。”キタノブルー”を表すアイテムのひとつとして、画面に非常に効果的な登場をし、強烈なエンディングでも重要な役割を演じるカリーナEDなのだが、あのブルーはやはり撮影にあたってリペイントしたものなのであろうと思いつつ、純正カラーにある色なのか、未だ確認したことがない。それは措いても、そうした使い方に二代目EDがぴったりハマるのは、やはりビジュアル重視のクルマだからなのであろう。カタログを見ながら、ひとり納得したのであった。

文・秦正史/提供元・CARSMEET WEB

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