ヘビとトカゲはあらゆる脊椎動物の中で最も多様性に富むグループのひとつです。

生息域は温帯から熱帯、砂漠、地中、川、海と、地球上のほぼ全域に広がっており、爬虫類の種数は全体で現在1万種近くが確認されていますが、そのほとんどをヘビとトカゲが占めています。

なぜヘビとトカゲはこれほどまで多様化しているのでしょうか?

米ミシガン大学(University of Michigan)とストーニーブルック大学(SBU)はその秘密の一端を紐解くため、世界中の博物館にある6万点以上のヘビとトカゲの標本から形態・食事・遺伝子などの変遷を調査。

その結果、ヘビは進化の速度が異常に速く、トカゲに比べて3倍のスピードで進化していることがわかったのです。

研究の詳細は2024年2月22日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。

多様なヘビの世界:ミミズサイズから竜のようなクールな種まで

現存する爬虫類は大きく、カメ、ワニ、ムカシトカゲ、そしてヘビとトカゲを代表とする「有鱗目(ゆうりんもく)」というグループに分かれています。

この中で有鱗目は、これまでに約7000種以上が発見されており、爬虫類の中でも最大のグループです。

中でもヘビ類はサイズや形、食性、生息域などのバリエーションが他の爬虫類に比べて幅広く、特異な存在となっています。

生息域は地上から地中、樹上、湿地帯、高山、温泉地、淡水、海水など、北極や南極のような極地を除けば、ヘビがいないところはほぼないといって過言ではありません。

形態も多岐にわたり、アオダイショウのようなメジャーな種から、ジャガーも丸呑みできるオオアナコンダ、逆にアリやシロアリを食べる小さなホソメクラヘビ、強烈な神経毒をもつコブラやウミヘビ、竜のようにクールな見た目のブッシュバイパーなど、ユニークな種が豊富です。

竜のようにカッコいいブッシュバイパー
竜のようにカッコいいブッシュバイパー / Credit: canva

こちらは世界最小のヘビ類といわれるホソメクラヘビの一種です。

彼らは地中性で穴を掘って生活しており、小さなアリを食べています。

一見するとミミズのようですが、これでもれっきとした大人のヘビです。

ホソメクラヘビの一種
ホソメクラヘビの一種 / Credit: ja.wikipedia

ヘビは元々、恐竜時代にいたトカゲのような四足動物の祖先から進化し、恐竜が完全にいなくなる約6600万年前から一挙に多様化したといわれています。

では、ヘビの進化速度は実際にどれくらい速いものだったのでしょうか?