湘南は奇跡を起こせるか
湘南が目指すべきは、2015/16シーズンのイングランド・プレミアリーグを制したレスター・シティのような戦い方だろう。このシーズン、レスターの基本布陣は今の湘南と同じく[4-4-2]。ジェイミー・バーディと岡崎慎司の両FW(2トップ)が相手サイドバックの背後を適宜狙い、ここを目がけたロングパスが同クラブの攻撃の初手となっていた。
戦術がシンプルで真新しくなくても、ビッグネームがいなくとも、選手全員が原則を守ったうえでハードワークをすれば奇跡を起こせる。これが2015/16シーズンにレスターが証明したサッカーの本質であり、この時代の同クラブは「ミラクル・レスター」という愛称で多くのサッカーファンに語り継がれた。
今の湘南の2トップ、ルキアンと鈴木章斗の両FWも機動力は十分で、開幕節から適宜サイドへ流れボールを収めている。湘南の現有戦力の特長を踏まえても、2015/16シーズンのレスターのような戦い方は可能だろう。明確になり始めた攻撃のコンセプトを第3節以降も徹底できるか。「ミラクル・ベルマーレ」が実現するかどうかは、この点にかかっている。
湘南が突き詰めるべきプレス強度
湘南の今季リーグ戦2試合を見た限り、基本布陣[4-4-2]の2トップ、ルキアンと鈴木章斗が相手センターバックからボランチへのパスコースを塞ぎ、相手のパス回しをサイドへ追いやることはできている。湘南の新布陣の完成度はまずまずで、機能し始めたと言って差し支えないだろう。
守備のコンセプトは概ね固まっているが、近年巻き込まれているJ1残留争いから脱却し、上位進出を果たすためには、敵陣タッチライン際での守備強度を上げる必要がある。京都戦の失点場面では、自陣からロングパスを繰り出そうとした相手選手に湘南の選手が寄せておらず、速攻の起点を作られている。また、直近2試合に関しては相手センターバックからサイドバックにパスが渡り、サイドバックがタッチライン際に追い込まれたときの、湘南の両サイドハーフ(平岡大陽と池田昌生の両MF)のプレス強度が足りない場面もあった。
今2024シーズンのJ1リーグ第2節終了時点で連勝を収めたチームはゼロ。早くも混戦ムードが漂っており、今年は僅かな戦術の綻びが成績不振に繋がるシーズンとなるだろう。湘南を含めた全J1クラブによる、ハイレベルな競争を期待したい。