新興企業向けビジネスに積極的

 企業の新規株式公開(IPO)意欲は旺盛だ。東京証券取引所の発表によれば、2023年の国内新規株式公開の件数は前年比13社増の124社の見込みで、過去10年間で2番目に多い。KOKUSAI ELECTRIC(旧日立国際電気)をはじめ初値ベースの時価総額が1000億円を超えた企業は前年比2倍の6社に上る。

 SBI証券は22年度の新規株式公開案件の98.9%にかかわり(前出・日経記事より)、引受業務において国内首位。SBIHDの口座数は1100万を超え、口座数でもネット証券首位となっている。

 SBIHDは積極果敢な行動で知られる。19年、地域金融機関との「第四のメガバンク構想」、いわゆる地銀連合構想を発表。SBIHDが過半を出資して持ち株会社を設立し、大手銀行や地方銀行、ベンチャーキャピタルなどに出資を募り、地銀に金融基幹システムなどのインフラのほか、商品・サービスを提供する構想を掲げた。地銀の島根銀行(松江市)、福島銀行(福島市)、清水銀行(静岡市)、東和銀行(前橋市)、じもとホールディングス(仙台市)などに出資を行い、地銀連合形成を進め始めた。21年には、新生銀行に対して銀行業界では異例の敵対的TOB(株式公開買い付け)をかけることを発表。買収を完了させ23年にはSBI新生銀行に社名を変更し、9月に上場を廃止して非公開企業となった。

 新興企業向けビジネスにも注力している。傘下のSBIインベストメントは累計で7000億円超のベンチャーファンドを組成。今年11月にはAIやフィンテックなどの新興企業に投資するファンドの運用を開始し、金額は最大1000億円程度の見通しとなっている。

 今年、金融業界を驚かせたのが、SBI証券が8月に発表した国内株式の取引手数料の無料化だ。これにネット証券2位の楽天証券も追随した一方、マネックス証券は追随しないと発表するなど、業界の動きは二分している。

「IPO引受業務の手数料などでしっかりと利益を稼いでいて体力があるSBI証券だからこそできる芸当。この手数料無料化でネット証券市場におけるSBI証券の一人勝ちの構図がますます強まった。10月にはNTTドコモがマネックス証券を子会社化したが、マネックスグループとしてはSBI証券に白旗をあげ、将来的に高い収益が見込めなくなったネット証券事業への関与を薄めていく意向だと受け止められている」(金融業界関係者)

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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