かつてのオーナーだからこそ知る実像とは…?
これまで、いくつかの自動車プラモデルの制作記を、その作業と同時進行でお伝えしてきた当「CARSMEETモデルカー倶楽部」であるが、今回から新たなプロジェクト、フジミ製1/24スケールの三代目ホンダ・プレリュードを開始したい。本来キットにはないエンジンを搭載してみようというのがその大きな眼目であるが、まず第1回は、作者・Ken-1氏に、その意図するところを語っていただいた。
「『あれ、説明書通り作ってるねんけど……』
幼少の頃にプラモデルに目覚め、キャラクター模型からクルマ模型にシフトした頃にメインに作っていたのは、タミヤ製のキット。その頃は、ちょうどディスプレイモデルとしてのカーモデルが確立し始めた時期で、それぞれのモデルに専用のシャシーや、キットによってはエンジンが用意され、組み立てるだけである程度ピシッとした姿に仕上がってくれました。
そんなキットを楽しみながらも、次第に興味は音楽やギター・バンド活動に移り行き、「なんかバンドマンがプラモって??」と、模型趣味からからは少し離れて数年後、F1ブーム到来。当時の友人が突然、F1キットを制作し、作品を見せてくれたことで、模型熱が再点火。これなら俺のほうがうまい!(笑)などと勘違いしてF1モデルを制作し始めた頃、免許を取得し念願の自分のクルマを手に入れました。それが当時人気絶頂、世界初の4WSを搭載した三代目ホンダ・プレリュード。
たまたま知り合いのクルマ屋さんが下取りで入ってきたのを紹介してくれたのですが、当時走りのMT車が欲しかった自分としては、デートカーなプレリュードで白のATというのに抵抗を感じつつも、「一度試乗してみたら」という言葉に乗っかったが最後、最初の走り出しで舞い上がってしまい、購入を決意。冷静に考えればF1のホンダ以外はなにも希望に合ってないクルマの購入を決めてしまう、若さゆえの過ち(笑)。納車後しばらくすると、せめてMTにしておけば……と、数年後に乗り換えるまで後悔することになるのです。
しかしそれでも自分の初めてのクルマ。デートカーなイメージはあるものの、当時のホンダらしさ溢れる低くシャープなスタイリングと、SiグレードのDOHCエンジンの吹け上がり、低いボンネットからの視認性の良さと掴みやすい車体感覚、話題の4WSのメカニカル感は、なんだかんだ言ってもお気に入りでした。とはいえ問題がない訳ではなく、ボディ剛性の低さから起因するルームランプ点灯(当時は謎現象だった)や、すぐ経年劣化が起きてあちこち壊れる内装のプアさ。
さらに真夏にぶっ壊れるエアコン事件や、荒れた路面にややハイスピードで侵入すると全くコントロールできなくなる恐ろしさ、なぜかブレーキ踏むと右に曲がる操舵性(後に事故車であったと判明。安かった訳だ)と、実は縦列駐車がしにくい機械式4WS(ステアを軽く切る際に同位相となる後輪が路肩から離れていってしまう)など、また過渡期を感じるポイントも多いクルマでした。
そんなプレリュードのプラモデルキットがあると知り、F1キットでプラモに復活し始めた頃の自分としても、やはり愛車の模型は作ってみたくなるのはカーモデラーの性(さが)な訳です。そこで、おそらく初めてとなるT社以外のカーモデルキットを製作することに。しかし、慣れているT社は完全にディスプレイキットとしてカーモデルを設計していましたが、まだまだクルマ模型全体としては過渡期の時期、このフジミ製プレリュードも、モーターライズ時代の影響を色濃く残した共通シャシーに、パーツを追加して足周りを車格に合わすようになっています。
そこで、冒頭の呟きへとつながります。そう、説明書通りに組んでもボディとシャシーの位置関係が合わない。これは、車種ごとに合わせて作られているシャシーに慣れていた当時の自分にとって、「ボディ形状はいいのになんでこんなちぐはぐな仕上がりになるんだ??」と疑問符だらけ。まだまだ改造修正するという概念がない頃だったので、ボディが悪いのか足回りが悪いのか、原因もまるでわからずT社以外のクルマ模型に苦手意識が生まれることに……。
今だからこそできる作り方で、納得のいくプレリュードに!
それがずっと今日まで引っかかっていたのですが、今の自分が作ればバシッとしたプレリュードを作ることができるのではないか? あの当時、ATということが最後まで引っかかり、どこか残念だった最初の愛車ながら、今の自分にとっては、逆にATならではの良さもあったと感じつつ、もう一度楽しんでみたいという思いも大きくなってきているのですが、さすがにそれはもう難しい現実。
そういう思いも含め、フジミ製プレリュードに再チャレンジしたいという機会を伺っていました。そのタイミンクがまさに満ちた今回の制作。あの頃の思い出とともに、納得いくまで楽しませていただきたいと思っています!
今回は、ざっと仮組みをしてキット状態を確認。なかなかいいと思っていたボディ形状も数カ所、微妙な違和感を発見。そして、最大の問題とも言える板シャシーとボディのマッチングが当作例の最大のポイントとなるでしょう。さらにDOHC・B20A型エンジンの再現も。そして、できるならば4WSやリトラクタブルライトのギミックもなんとかならないかと考えています。
さあ、初の制作から30年以上経過し、当時考えもしなかった模型ライターになぜかなってしまっている自分が挑む、再チャレンジ。どうなることでしょう?」
文・秦正史/提供元・CARSMEET WEB
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