クリスタル・スカルは誰が何のために作ったのか
そもそもこれらのクリスタル・スカルは、誰がどうやって、何のために作ったのでしょうか。
まずは素材に着目してみます。
いくつか存在するクリスタル・スカルは、その名の通り水晶から作られています。
水晶とは二酸化ケイ素が結晶化した鉱物の中でも、特に透明度が高い石英のことを言います。
地質学者のアーネスト・ブラウンという人物は、「ヘッジス・スカルに使われた水晶は、大きな結晶が大量に産出するブラジルで産出されたものだ」と考えました。
組成の調査結果においても、マダガスカルとブラジルでのみ発見されている含有物があることから、先コロンブス期以前のアステカでは入手できないものであったことが示唆されています。
そして、これらのクリスタルの加工には回転砥石が使われていました。
19世紀にこの技術を用いて高い水準で宝石をカット、研磨できたのは、ドイツの宝石産業や彫刻で有名なイダー=オーバーシュタインという町の宝石職人だと考えられています。また、この町は輸入したブラジル産の石英を使った工芸品の製造で有名でした。
以上のことから、クリスタル・スカルはイダー=オーバーシュタインで製造された工芸品が売り出され、出回ったものと考えられます。

クリスタル・スカルに関するオカルト的主張
クリスタル・スカルには神秘的な力があると主張する人々がいます。
中でも、「世界中にある13個のクリスタル・スカルをマヤ暦の最終日である2012年12月21日に並べることで世界の滅亡を防ぐ」といった2012年人類滅亡説と関連付けられた話題は記憶にある人もいるのではないでしょうか。
他にも、病気や怪我を治癒する、古代の知識が眠っている、未来を予知する力があるなど、多数の非科学的な主張がされています。
これらの主張はもちろん科学的な根拠がなく信憑性はありませんが、それでもなお、これらのオカルト的な主張が尽きないのはクリスタル・スカルがもつ魅力からなのかもしれません。
なぜ多くの人々はオーパーツとして受け入れたのか

しかし、なぜクリスタル・スカルがオーパーツとしてここまで有名になったのでしょうか。
それは、いくつかの背景が複合的に絡み合ったことに理由があると考えられます。
まず、その起源が不明確であった点が神秘的なイメージを高めました。特にメソアメリカの古代文明に由来すると広く信じられていたことがこの神秘性に拍車をかけています。
クリスタル・スカルには超自然的な力が宿っているというオカルト的な主張も、この遺物が単なる人工物を超えた何かとして認識される重要な要因です。このような主張は、古代の遺物や神秘的な力に対する人々の一般的な興味と相まって、クリスタル・スカルに独特の魅力を与えました。
不明確な起源、オカルト的な主張、メディアの影響などの要素が総合的に作用し、クリスタル・スカルが世界中で知られるオーパーツとなったのです。
近年では「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」といった映画作品が公開されたことも、この神秘的な遺物の一般的な認知度の高さを象徴しています。
クリスタル・スカルの真実
クリスタル・スカルは結局のところ、ドイツの宝石職人が製造した工芸品のひとつでした。
しかし、世界中で多くの人を魅了するクリスタル・スカルは、単なる工芸品を超えた「文化的アイコン」なのかもしれません。
科学的な証拠は、しばしばオーパーツなどのロマンを打ち消すことがあります。
しかし逆に、古代のロマンに思いを馳せる人々は、しばしば科学的証拠を覆い隠してしまいます。
クリスタル・スカルはこれら数々の逸話に魅力を感じた人々が、故意にがっかりなオチとなる部分を隠して広めたことで、不思議なオーパーツとして広まりました。
もしかしたら、ここまで説明を聞いても、まだ本物がどこかに紛れているんじゃないかと考える人もいるかもしれません。
そうした古代のロマンに浸りたい人々の心がオーパーツ「クリスタル・スカル」を生み出したと言えるでしょう。
事実を知ってもなお想像力と興味をかきたてる魅力は、これからも人々の心に刻まれていくのかもしれません。たとえそれが嘘だったとしても。
参考文献
the controversial history of the crystal skulls: a case study in interpretive drift
The origins of two purportedly pre-Columbian Mexican crystal skulls
ライター
榊田純: (さかきだ じゅん)動物、歴史・考古学、地球科学など、身近な疑問からロマン溢れる話題まで広く興味があります。どなたにでもわかりやすい記事を書くのが目標。趣味は映画、ゲーム、ウォーキング、ホットヨガ。とにかく猫が好き。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。