ミツビシ3000GT、日本名GTO。
三菱のGTOと言えば、大昔なら、1970年にデビューしたコルト・ギャランGTOのことを指したものだが、今ではGTOと言った場合、多くの人が思い浮かべるのは、バブル全盛期に発表された三菱GTOであろう。
1990年10月に発売された三菱GTOは、それまでのスタリオンの後継としてデビューしたハイテク満載の「スポーツカー」だ。そのワイドボディからも分かる通り、スタリオン同様に北米市場を睨んで開発されたモデルであり、国外にはミツビシ3000GTの名で販売されたほか、アメリカでは兄弟車としてダッジ・ステルスも送り出された。
ボディ形式はリアハッチを持つ2ドアのファストバック・クーペ、全幅は前述の通り幅広く1840mm、全長は4555mm。スタイリングは、当時の三菱がコンセプトカーなどで盛んに見せていた、うねりのある曲面を多用したものだった。HSXの名で前年にモーターショーに出品された際は、ホンダNSXのようにリアフェンダーから面が繋がったリアウィングが特徴だったが、市販されたGTOでは別体のスポイラーに改められていた。
基本的なドライブトレインはディアマンテと共用しており、FFベースのフルタイム4WDというレイアウトを持つ。横向きに搭載されるエンジンはV6 3L、DOHC24バルブの6G72で、最高出力はインタークーラー付きツインターボでは280ps、ターボなしでは225ps。サスペンションはフロントがストラット、リアがダブルウィッシュボーンとなる。メカニズムの基本コンセプトは「オール・ホイール・コントロール」という考え方で、フルタイム4WDのほか、時速50km以上で作動する4WS、電子制御サスペンション、大型ベンチレーテッドディスクブレーキ(前後とも)とABSなどが組み合わされていた。
こうした電子制御ギミックがいたるところに導入されていたのもGTOの特徴で、空力面ではアクティブエアロ・システムを採用。これは時速80km以上に達するとフロントのベンチュリーカバーがせり出し、リアスポイラーの角度も増すというものである。また、アクティブ・エキゾースト・サウンドというものもあった。これは、街乗りモードとスポーツモードの2種類に排気音を切り替えられるという装備である。
この後10年以上にわたって販売されたGTOであるが、その変遷を辿ると、まず登場から1年少々のちの1992年1月には小変更を行い、ホイールサイズを17インチへと拡大。同年6月には、本革シートやグラストップを標準装備するスペシャルパッケージを設定。1993年8月にはマイナーチェンジを行いボディ前後のデザインを変更、中期型へと移行した。フロントはリトラクタブルライトを廃し、リアにはボディカラーのガーニッシュを設けている。同時に、ツインターボ用の5速MTを6速へとアップグレード。
1年後の1994年8月には、新グレードのツインターボMRが加わった。これはスポーツ性を重視し軽量化を図ったもので、4WSやオートクルーズ、ABSなどが省略されている。さらに1年後の1995年8月には、ノンターボモデルをベースグレードのSRという扱いに変え、装備の見直しも行った。1996年8月には再びマイチェンを行い、フロントバンパーやリアスポイラーのデザインを変更。リアスポイラーはボディとのインテグレーテッド型(風)に改められている。ツインターボのホイールは18インチへとさらに拡大された。
1998年8月には最後のマイナーチェンジで最終型となる。このときの変更では、フロントのターンシグナルがヘッドライトと一体化され、さらにフロントバンパーも中央の開口部を拡大した新形状へと進化。リアスポイラーも巨大なものへと変更されている。この後は目立った変更はないまま2001年まで販売されたのであった。
なんとも特徴のないカタログは、スポーツカーとしての実力を暗示したものと言えなくもない
いささか解説が長くなってしまったが、ここでご覧いただいているカタログは、1993年8月から1996年8月までの間、いわゆる中期型GTOのものである。ツインターボMRが掲載されているので、正確には1994年8月以降のものだが、カタログの表4にも「(94-08)」と記されており、このグレードが追加されたと同時に発行されたものと考えて間違いないだろう。サイズは298×245mm(縦×横)、ページ数は表紙を含めて全18ページとなる。
カタログの作りとしては特に変わったところもないが(一点だけ、最後の主要諸元のページが折り畳みとなっており、広げると上に掲げたグレード一覧となる)、ページ数が少なめであるため、簡易版と言ってよいものだろう。中期型にはもうすこしページ数の多いカタログもあったようである。
S14シルビアの時も書いたが、どうにもこの頃から日本車のカタログには特徴がなくなってきたようである。表紙を含め、写真は光と影を強調したものでなかなかカッコイイのだが、さりとて、このクルマをどういうイメージで売ろうとしているカタログなのか、というところはいまひとつ掴みにくい。前述の通り、ハイテク満載であることが売りであったGTOのはずだが、そうした部分のアピールも控えめだ。もっともこれは、デビューから大分経過したのちのカタログであること、簡易版であることなども理由かもしれない。
カタログ協力:宇佐美健太郎
文・秦正史/提供元・CARSMEET WEB
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