「お金面から離婚をポジティブに考える」ここでは確定申告の大事なポイントについて紹介しよう。実は離婚と確定申告は、密接な関係がある。そして、確定申告の制度を知り、活用することで、離婚をポジティブに捉えることができるようになる。
「知らなかった」「こんなはずでは」と嘆くことのないように、事前にしっかり頭に入れておきたい。
1.どの時点で離婚しても、配偶者控除からは外すこと
離婚する前、配偶者が専業主婦(主夫)として家庭を守ってくれていた場合は、当然配偶者控除をしているだろう。勤務先では毎年、年末調整が近づくと、扶養の届出書に変更がないか確認が来るはずだ。離婚した場合、1年のどの時点で離婚していても、「元」配偶者は扶養から外さなければならない。
なぜなら、配偶者控除はその年の12月31日の時点の現況で判断するからだ。たとえ12月30日に離婚したとしても、配偶者控除の対象にはならないので気を付けよう。扶養から外すのを忘れていて、後から追加で税金を払わなければならない、という心情的にも苦しい手続きになる。
2.財産分与のポイントは「いつ」「何で」「どれくらい」
婚姻期間中に築いた資産は、「夫婦二人で築いたもの」とみなされ、双方にもらう権利がある。そして基本的には、離婚時の財産分与として財産を受け取った場合、その資産に税金がかかることはない。しかし財産を分けるタイミングや額、もらい方によっては税金がかかるケースもあることを認識しておいてほしい。以下でどのようなパターンに課税されるのかを見ていこう。
(1)すべて金銭で財産分与する場合
この場合は、ほぼ税金はかからないと考えて良い。しかし、「双方に平等に権利がある」という点を考えると、共有の財産を一方が1/2よりもはるかに多く譲り受けた場合には、贈与税がかかる可能性が出てくる。
(2)自宅を分与する場合
①離婚する「前」に自宅を分与した場合、もらった側に贈与税がかかる
離婚届を提出する前に、夫名義の自宅を妻が財産分与として受け取ったとする。その場合、単純に夫婦間での贈与とみなされ、もらった側に贈与税がかかる。婚姻期間が20年以上なら2110万円までは税金はかからないが、20年以下の場合は110万円を超える部分に贈与税がかかってしまう。
②離婚した「後」に自宅を分与した場合、分与した側に譲渡所得税がかかる
①の離婚前のケースと打って変わり、離婚後に夫名義の自宅を妻に譲ったときは注意。あげた側(この例の場合夫)に税金がかかる。妻に資産を「売った」とみなされてしまうのだ。しかし、この場合は「マイホームを売却した時の特例」を活用し、きちんと確定申告を行えば、マイホームの価値が買った時より上がっていない限り、税金がかかることはない。この場合、勝手に特例が適用されるわけではなく、自分で確定申告が必要になるためご注意いただきたい。
ちなみに、自宅を相手に譲り渡したからと言って、住宅ローンまで紐づいて相手に渡るわけではない。住宅ローンがまだ残っている場合は、組んだ本人の元に残ったままになることは忘れないでほしい。
上記2点をふまえると、マイホームを相手に譲り渡す場合、
・離婚届を提出後、「元」配偶者に譲り渡す
・「マイホームを売った時の特例」を活用し、確定申告を行う
上記の手順をお勧めする。
3.「養育費」の支払いで、子供は扶養に入れられる可能性がある
さて、子供がいる場合、離婚後に相手が子供を引き取っていたとしても、養育費を支払っていることは多いだろう。一定金額の生活費を毎月送金している等の場合、扶養控除を受けられる可能性が出てくる。扶養か否かは、「一緒に住んでいるかどうか」が問題ではないからだ。
ただ、注意したいことが一点ある。子供と同居している相手が、子供を扶養に入れているかどうかだ。双方で二重に扶養控除を受けることはできない。この点に関しては事前に話し合っておきたい。知らずに双方で扶養に入れてしまっていた場合は、どちらかが遡って扶養控除分の税金を支払わなければならなくなる可能性があるからだ。
お互い納得のいく「離婚のかたち」を考える
離婚を成立させるまでの道のりももちろん険しいものだが、離婚後の「後処理」も忘れず行わなければ、後で面倒なことになったり、余計な税金を支払ったりすることになりかねない。離婚後も金銭的なことで連絡を取り合うことになると気まずいものだ。
一度は生涯を共にしようと誓った相手。共に歩むことはなくなっても、相手の将来を応援できる間柄でありたい。そのためにも、年金や税金など国の定めたルールもよく理解しておくことが大切だ。事前にお互いにとって一番良い「離婚のかたち」を考え、納得のいく解決をしてほしい。
文・工藤 崇(FP事務所MYS(マイス)代表)/ZUU online
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