楽しい給料日がやってきた。給料明細を受けとったあなたは、明細書のどこを見ているだろうか。もしや「給与支給額」を見るだけで終わりにしてはいないだろうか。
サラリーマンはこんなにとられている
現在、サラリーマンの納税は会社が代行している。これを「煩わしい納税作業から解放されてラッキー」などと勘違いしてはいけない。サラリーマンが源泉徴収をされると、「自分が支払っている」という痛みを感じにくく、納税意識には繋がりにくいからだ。
試しに、国税庁のHPに出ている所得税の速算表に基づき、年収400万円の所得税額を計算してみよう。すると、所得税だけで年間37万2500円かかっていることがわかる。さらに住民税が10%、社会保険料の自己負担分が約13%、プラス消費税が8%と、2037年までは復興特別所得税が加わる(税率は2016年5月)。
所得税は累進課税のため、収入が上がれば上がるほど税率も上がっていき、最高税率は45%になる。各税金と社会保険料を合算した合計で見ると、もっとも課税所得金額の少ない人(195万円以下)でも収入の約28%と、1/3近くを税金でとられているのである。
さらに「自腹が多い」サラリーマン
サラリーマンはもともと手取りが少ない上に、会社の経費を自分で支払っていたり、私物を使って仕事をしたりしている場合も多い。
たとえばあなたは、会社の仕事を持ち帰って家でやる場合に、自分のパソコンを使って作業したりすることはないだろうか。また自分の携帯から、会社の取引先に電話をかけたりするのはどうだろう。他にも車やガソリン代、交通費、交際費、文房具など、仕事をする際に自分のものを使っていることが意外に多いのではないだろうか。特に下の人は経費精算を面倒に思ったり、会社から認められる経費の額が小さかったりして、自己負担する割合が高いように思われる。
どちらにしろ「会社として」ものを買わない限り、基本的には経費にならない。サラリーマンが個人的に買うものは、税務上では「仕事で使うものではない」と判断されているのである。
減らさないためには「経費にする」
お金をたくさん稼ぐことも大切だが、同時に「減らさない」工夫も大切である。パソコンも携帯電話も、損益通算すれば、費用も通信料もすべて経費扱いになるのだから。
実はこの「費用を経費にできるかどうか」の差はとても大きい。サラリーマンは、みなし経費と保険料など控除以外の収入が課税対象になるが、事業はほとんどのものが経費として計上できる。法人の場合、課税はそうした経費を差し引かれた後であり、経費が多くなればその分、課税対象金額も少なくなるのである。
これを「他人ごと」と思ってはいけない。我々も、このスキームを応用しない手はない。あなたがサラリーマンしかやっていないとしたら、例えるなら、じぶん株式会社にサラリーマン事業部しかない会社ということになる。悲しいことに、サラリーマン事業部は赤字にさせてもらえない。サラリーマン事業はみなし控除として経費に制限があるからだ。
サラリーマン必見「富士山上」とは?
現在日本では、所得税や法人税などの申告には、申告納税制度が採用されている。申告納税制度とは、基本的に納税者自らが税金を計算して申告する方法のこと。対する賦課課税制度とは、個人住民税などで採用されている方法で、国や地方公共団体などが一方的に税額を決定する制度のことである。
国税庁のHPでは「申告納税制度は、納税者自らが税法を正しく理解し、その税法に従って正しい申告と納税をするという極めて民主的な制度である」と謳っている。しかし実際は、サラリーマンは会社の源泉徴収によって、税金をよくわからないまま徴収され、給与だけではほとんど節税もできない有り様である。
ところが、サラリーマンでも、サラリーマン以外の事業を持てば損益通算という概念があてはまる。その頭文字をとって、FPの世界では「富士山上(ふじさんじょう)」と言われる。
富…不動産所得
士…事業所得
山…山林所得
上…譲渡所得
中でも、サラリーマンが最もイメージしやすいのが不動産所得か事業所得だと思われる。
そこで筆者からサラリーマンへの提案としては、
(1)給与所得以外の収入を得る(不動産や副業など)
(2)最初は個人事業主から始めて、収入が増えてきたら法人化する
の2ステップで法人化を目指すことをご提案したい。サラリーマンでも法人を持てることは、拙著「『独立を目指す会社員』必見!退職後に役立つ3つのコト」でもお伝えしている。
筆者が法人化をお勧めする理由は、その方がより経費を計上しやすいからである。中には「会社を経営するなんて、お金がかかるんじゃないか」と心配する人もいるかもしれないが、合同会社などにすれば、諸経費を安く抑えることは可能である。
詳しくは、拙著『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』(日本経済新聞出版社)に記載しておいたので、そちらをご覧いただきたい。あなたが将来設計を考える際の手引書として、また自分の身を守る術を知る手段として、ぜひ本書のご一読をお勧めする。知識は必要だが、可能性は選択肢から生まれるのだ。
これからは、サラリーマンも会社を持つ時代がやってくる。めまぐるしく変化する世の中を生きていく上で、「知っているか知らないか」の差は、広がることはあっても縮まることはないのである。
文・俣野成敏(またの なるとし)/ZUU online
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