腕時計の文字盤に採用される素材といえば金属が一般的だが、ここ数年の間に時計の外装パーツの加工技術が進化したこともあり、文字盤素材の多様化が促進。いままでは一部の高級ブランドだけが採用してきたカーボン、アベンチュリン、メテオライトなどの特殊な素材を採用したモデルが手の届く価格帯からもリリースされるようになってきた。
まだ一部の時計好きが注目するような静かなブームではあるが、今後大きなトレンドになっていきそうな雰囲気もあり、こうしたユニーク素材を採用したモデルは、時計ファンであればいまのうちからチェックしておきたいジャンルのひとつといえるだろう。
そんな特殊な素材のなかで、今回注目したのは“ダマスカススチール”。古代インドで発明され、シリアのダマスカスで製造技術が発展したダマスカス鋼からインスパイアされた、木目状の模様を持つ鍛造鋼の名称だ。
ダマスカス鋼は中世の十字軍が遠征後に加工技術をヨーロッパに伝えられ、中世のヨーロッパでも製造されるようになったとされている。古代のダマスカス鋼については製法が絶えている幻の金属のため、現代の“ダマスカススチール”は異種の金属を重ね合わせて人工的に模様作っており、積層させた金属層が美しい波状の縞模様を見せる。
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知る人ぞ知る素材のため日本で買えるブランドだけでなく、日本未上陸のブランドでもダマスカススチールを採用したモデルは少ないが、三つのモデルをピックアップしてみた。ダマスカススールの金属層は、切削や研磨の仕方によって模様が異なる点にも注目しておきたい。表情が微妙に異なるというのがコレクター心をくすぐる魅力と言えるだろう。
SINN(ジン)
1800.S.GG.DAMASZENER
通常の時計はケースと文字盤を独立したパーツとして設計するが、本作はダマスカス模様の積層鋼材の独特な風合いを強調するため、ケースと文字盤を一体型で設計し、完全なスチールブロックから製造されている。テギメント加工により耐傷性を高めるとともに、さらにPVDを加えたブラック・ハード・コーティングにより、ダマスカススチール独特のバターンが絶妙な明るさで浮かび上がる。
[ジン日本公式サイト]https://sinn-japan.jp/
WALDHOFF(ヴァルドホフ)
コンチネンタルS
ストーヴァで時計師として働いていた経歴をもつマンフレッド・スタルクが2015年にドイツのフォルツハイムで創設した時計ブランド、ヴァルドホフ。本作はダマスカススチール文字盤とトゥールビヨンを組み合わせたデザインが最大の特徴。メカニカルなトゥールビヨンとダマスカススチールの組み合わせによって、工芸的な雰囲気を醸し出している。10角形ベゼル(904Lスチール)と8角形のミドルケース(316Lスチール)も、立体的で重厚な質感を際立たせている。
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クラウドファンディングサービス“machi-ya(マチヤ)”で予約発売(1月6日〜2月29日まで)を実施
GoS Watches (ゴース・ウォッチ)
サレク・トロリウス II
刃物職人のヨハン・グスタフソンと時計職人のパトリック・シェーグレンにより、スウェーデンで製造されている日本未上陸の時計ブランド。本作は伝統的な無着色の164層のダマスカス鋼文字盤にゴールドメッキの針がアクセントを加えるサレクシリーズの第2弾。トロリウスはスウェーデン北部のサレク国立公園でよく見られる、黄色いつぼみを持つ花に由来し、時計のスクロールワークはトロリウスの花びらに似ており、黄色いつぼみを模倣した24K ゴールドから手作りされたピンがケース側面の各楕円形の溝にリベット留めされている。
[GoS Watches (ゴース・ウォッチ)公式サイト]https://www.goswatches.com
文◎Watch LIFE NEWS編集部