同大統領は19日の記者会見で兵士不足を解決するために、「軍が45万~50万人の追加動員を提案した」と明らかにした。ちなみに、ゼレンスキー氏は、追加動員には5000億フリブナ(約135億ドル)の追加予算が必要になるという。

ウクライナでは総動員令が施行され、戦闘可能な男性18~60歳は全員徴兵の対象となる。戦争が長期化し、戦場で犠牲となる兵士も増え、ウクライナ軍の兵士の平均年齢が40歳ともいわれている。兵士不足と兵士の高齢化が進んできているわけだ。

なお、ウクライナ軍トップのザルジニー総司令官は26日、「軍が45万~50万人の追加動員を提案した」とするゼレンスキー大統領の発言について、「人数を挙げて要請した事実はない」と否定するなど、ゼレンスキー大統領と軍トップの間で意見の相違があることを浮かびあがらせた。戦時中だけに、危険な兆候だ。

ところで、ゼレンスキー大統領は27日、ウクライナの新たな「防衛パッケージ」について、「現在我が国の防衛産業は合計約30万人を雇用しており、ここ数年間での我が国の最大の成果の1つだ。ウクライナの防衛産業は単に回復しているだけではなく、現代のテクノロジー主導の戦争に必要な生産性を獲得しつつある。防衛産業の5社のうち4社が民間企業だ。何十年も活動を休止していた多くの国営企業が、新型兵器を含む生産を開始した。来年に向けて、私たちは大砲、無人機、ミサイル、装甲車両に関して明確な目標を設定した。今年の我々の主要な政治的成果の一つは、我々のパートナー、特に米国との武器の共同生産に関する合意だ」と述べている。

ゼレンスキー大統領は、「ウクライナは近い将来、必要な武器を自力で生産できる世界でも有数の軍事産業を有するようになる。ウクライナのために戦い、働くすべての人に栄光あれ!我らの民に栄光あれ!」と語り、演説を終えた。

軍事大国のロシアと闘うウクライナが必要な武器を自力で生産できるまでにはまだ多くの時間がかかるだろうし、現在の対ロシア戦争がいつまで続くかも不確かだ。ただ、ゼレンスキー氏にとって、欧米の武器供与依存から脱皮し、武器の自力生産を大きく掲げることで厭戦ムードが漂ってきた国民と軍関係者を新たに鼓舞する狙いがあるのだろう。

ゼレンスキー大統領 同大統領Fbより

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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